スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | --/--/-- --:--

バングラデシュが未来を切り拓くには何が必要だろうか? ~技術立国を目指して走り続ける若者たちの物語(その4)~

 気温の上昇とともに高まるボンゴボンドゥ国際会議場の熱気。スタートを切ったエコラン・カーが会場を3周して戻ってくると、すぐにレフリーが駆け寄り、車両に据え付けてある燃料用シリンダーのメモリを確認、ガソリンの使用量をチェックする。狭いコックピットから下りてヘルメットを脱いだドライバーの学生は、安堵と興奮が混じりあった笑顔を仲間に向けながらハイタッチを交わす。会場が歓声と拍手に包まれる。

   Ecorun 2013 8

 一方で、一旦スタートラインに並んだものの、走り出すことが出来ない車もある。学生たちは会場脇に車を移動させ、作業用具箱を広げ突貫工事に入る。エンジン・カバーをあけ、車輪と車軸の接続を確認するも問題点は見つからないようだ。

 「この前、うちのキャンパスで試したときは、ちゃんと動いたんだ…」

 焦りと失意が浮かぶ彼らの背中を、太陽が容赦なく照りつける。滲む汗、会場にこだまする金属音、そして無情に過ぎていく時間。真剣勝負のレースだからこそ、結果は冷徹だ。そこに妥協や抜け道、交渉の余地はない。動くものは動くし、動かないものは動かない。ものづくりの厳しい現実が、おそろいのポロシャツに身を包んだ学生たちの前に立ちはだかる。
 
  Eco-Run Bangladesh 2

 3月15日に開催されたエコラン全国大会に至る経緯、及びエコラン-バングラデシュの火付け役である青年海外協力隊員、大河原俊弥さんのエコランに懸ける想いについては、以下の記事を参照ください。
 「バングラデシュが未来を切り開くには何が必要だろうか~技術立国を目指す若者たちの物語(その1)~
 「バングラデシュが未来を切り開くには何が必要だろうか~技術立国を目指す若者たちの物語(その2)~
 「バングラデシュが未来を切り開くには何が必要だろうか~技術立国を目指す若者たちの物語(その3)~
  
 結局「第一回バングラデシュ・エコラン全国大会」という晴れ舞台で、見事完走することが出来たのは、エントリーした15台のうち10台だった。そして、小休止をはさんでいよいよレースの結果が発表される。JICAバングラデシュの戸田事務所長と、Ghulam Muhammed Quader商業大臣がステージに上がると、これまで会場を支配していた歓声が静寂と緊張に取って代わられた。参加チームそれぞれに参加賞が授与され、いよいよ3輪・4輪それぞれの部門における最優秀賞の発表だ。 
  
  「第一位、BUET!! (バングラデシュ工科大学)」
 
 会場の一角から沸きあがった雄叫びが、大臣の声をかき消した。そして「ブーエット!!ブーエット!!ブーエット!!!」という地鳴りのようなコールが続く。抱き合い、ハイタッチを交わしながら勝利の喜びをかみ締めるBUETのチーム・メンバー。 バングラデシュ最高峰の工科大学であるBUETは三輪部門、四輪部門ともに、優勝の栄光を手にした。

 続く第二位に輝いたのはCUET(チッタゴン工科大学)。そう、あのアルディーラさんのチームだ。 おそろいのライト・ブルーのポロシャツと弾ける笑顔、そして雲ひとつない空に突き上げられたVサインが、まっすぐな陽光の下でキラキラ輝いている。 人生に深く刻み込まれるであろうアツい青春の一ページを、今この瞬間、全身で謳歌している若い学生たちを、春風にそよぐバングラデシュと日本の国旗が温かく見守っている。「勝利の喜びを、敗北の悔しさを、さらなる挑戦への動力とするんだ。君たち一人ひとりが「技術立国バングラデシュ」という未来の担い手なんだ!」そんなメッセージを投げかけながら。 
 
  ECORUN-DHAKA3 
   ~ 三輪部門で2位、四輪部門で3位に輝いたCUET(チッタゴン工科大学)の学生たち。前から二列目、左から2番目の小柄な女学生がアルディーラさんだ~

 初の全国大会実現に至る3年という長い月日を通じて、若者たちを焚き付け、叱咤激励し、そして二人三脚で走り続けてきたエコラン・バングラデシュの原動力、大河原俊弥さんは、大会を振り返ってこんな風に語ってくれた。

 「エコラン全国大会を実現した今、バングラデシュの大学生たちに一番伝えたいこと・・・それはもちろん「どうだ、ものづくりって楽しいだろう?!」これに尽きます。」

 「頭で考えるだけではない、喧々諤々議論するだけでもない、思い描いたものを実際に具体的な形に落とし込む作業。これが本当に難しく、そして楽しい。失敗を重ねながら少しでも完成度を高めていくそのプロセスを、これからも大いに楽しんでもらいたい。来年以降もエコラン全国大会を続けていくことで、負けた悔しさ、勝った喜びを次に活かす機会が生まれるし、また、先輩と後輩同士の共同作業を通じた新たな絆も生まれるはずです。」

  Eco-Run Bangladesh 4

 「初のエコラン全国大会に敢えて点数をつけるとしたら・・・そうですね、60点というところでしょうか。いえ、別に厳しすぎる訳ではないと思いますよ。実際にエントリーした15車両のうち、しっかり完走できたのは3分の2でしたしね。それに、今回はJICAとバングラデシュの共同開催ということで、大会に必要な資金もJICA側から出ています。来年以降、バングラデシュ側の単独開催、そしてJICAの協賛という形にして、よりいっそう、バングラデシュの工科大学とそこで学ぶ学生たちが、資金面でも運営面でも独立していかなければならない。」

 大河原さんの視線は常に前にあり、その行動は常に現場にある。そんな大河原さんと語りながら、僕の脳裏に昔聞いたひとつのエピソードが蘇った。

 1950年代前半。未だバングラデシュが東パキスタンだった時代に、4人の日本人農業技術者がベンガルの土地にいた。当時のメディアや政府の高官は「ズボンのすそを膝までまくり上げ、はだしで泥田に入り込み、農家とともに田植えに勤しむ日本人技術者」の姿に驚嘆としたという。何しろ、 当時の東パキスタンの農業普及員と言えば、日傘を差しながら、田んぼの畦に立って、農家に「ああしろ、こうしろ」と指示を出すのが当たり前の姿だったのだから。

 それから半世紀以上を経た現在、バングラデシュの農村を訪問した日本人は、日本の農村を髣髴とさせる整然と列を成す水稲に出会うだろう。そして40年前の独立時と比較して2倍以上に増加した1億5千万人という巨大な人口にもかかわらず、ほぼ100%の自給率を達成したバングラデシュの米の生産力の高さに印象付けられるだろう。こうした持続的で確かな開発成果の影には、暑い太陽と容赦無い風雨の中で日々汗をかく現場の農家と徹底的に向き合い、彼らの声に耳を傾け、ともに試行錯誤を続け、そして必要な改善を自らの行動で示してきた日本人農業技術者の姿があるのだ。 
 
  そして今、バングラデシュは2020年までの中所得国入りを目指して第二次産業の基盤強化に官民を上げて取り組んでいる。そして、既に世界第2の輸出量を誇る既製服(Ready Made Garment)に加え、このブログでも紹介した強力な製薬産業、あるいは食品加工業、そして"Our Product"のキャッチ・コピーで知られ、Made in Bangladeshの冷房、冷蔵庫、そしてバイクまでをも生産するWalton等の製造業など、バングラデシュの極めて多彩で裾野の広い地場産業の存在を知れば、その目標が、決して非現実的なものではないことに気付くだろう。もちろん、課題も多い。たとえば、上述の産業が真に競争力を持つには、縫製業であればミシン、製造業であれば金型、製薬業であればAPI(Active Pharmaceutical Ingredients:医薬品有効成分)、バイクであればエンジンといった、付加価値の源泉となるインプットや装置を、輸入ではなくバングラデシュ人の手でつくれるようにならなければならない。

   Eco-Run Bangladesh 1
 ~エコラン全国大会の会場で見かけたWaltonのたて看板。レースに参加する学生チームにエンジンを無償提供するなど、Waltonはエコランの実現に大いに貢献した。なお、来年開催予定の第2回エコラン全国大会はHONDAとバングラデシュの共催で実施することも検討中だ~

 しかし、バングラデシュには、こうした大きな課題を乗り越えていく上で必要な資産がある。それは国全体の平均年齢が24歳という数字が示す大きな若い力だ。エコランに参加したような若者たちが、ものづくりの魅力を知り、その背景にある規律あるグループ・ワークや失敗から学ぶ創意工夫の大切さを全身で学んでいけば、この国は、その可能性を大きく開花できる。そして、日本人は、バングラデシュ人が自らの力で飛翔する上で大きな力となるパートナーとなれるのだ。バングラデシュの大学生とともに汗をかく大河原さんや、60年前にベンガルの大地で農家とともにあった日本人農業技術者たちが、その背中と行動で示したように。

  Eco-Run Bangladesh 3
~若い歓声が響くエコラン・バングラデシュの会場にはためく両国の国旗。大いなる感動と学びの機会を創ってくれた大河原俊弥さん、そしてバングラデシュの大学生の皆さん、本当にありがとう!~
スポンサーサイト
バングラデシュ人と日本人の協働が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2013/03/26 18:52
コメント:

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。