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自分は何故バングラデシュにいるのだろうか ①

 バングラデシュに降り立ってから1ヶ月半が過ぎた。
 非日常だったダッカの混沌とした風景も日常に溶けていく。時間はゆっくりと、しかし確実に流れていく。そういえば、5年前、僕が米国留学に旅立つ直前に、世話になっていた大学時代の先輩からこんなメッセージを頂いていたっけ。
 「池田君、2年後、アメリカから成田に帰る飛行機の中で、君は何を思っていたい?それを想像しながら、アメリカに向かうと良い。」

 今から2年後(正確には1年10ヶ月後)、「自分は成長し貢献した」という充足感と納得感を携えて日本に戻ることが出来るだろうか。分からない。ただ、それには、自分をこの地に導いた内なる北極星を意識し続けることが必要である気はする。




 7月11日の土曜日。
 今年3回目となる官民協働ネットワークCrossover21主催の「異業種ディスカッション大会」の会場となった世界銀行東京事務所は100名以上の人の熱気で沸いていた。Crossover21は、本業や本業以外の活動を通じて、社会を少しでも良くしたいと思い活動をしている人、活動を始めたいと思っている人たちが集う場だ。日常生活や仕事ではおそらく出会うことがなかったであろう、様々な業種で活躍する人々、10代の高校生から、第一線を退いてなお活躍する60代、70代の大先輩までが、社会に山積する様々な問題について、完全にフラットな立場で「自分は何が出来るか」を語り合い、お互いの生き方や価値観をぶつけ合うことのできる非日常的空間。
 Crossover21は、参加者が、自らのマインドセットを変える新しい物の見方や考え方を、新しい一歩を踏み出すパッションを、そして、新しいプロジェクトを始めるためのパートナーを得ることの出来る場として、2002年3月の立上げ以来、これまで10年間、多くの人々の支持と共感を得ながら続いてきた。

      Crossover21 グループ・ディスカッションの様子
  (Crossover21では様々な職業、年齢層で構成される参加者がフラットな立場で議論する)

 自分自身、創設以来のスタッフとして、そして一参加者として、Crossover21に集う、好奇心と向上心、そして公共心に満ちた仲間から、新しい気付きや前向きなエネルギー、そして自分が壁に当たった時に胸襟を開いて相談できる友情と信頼関係で結ばれた仲間を得ることが出来た。

 7月11日の「異業種ディスカッション大会」のテーマは「貧困削減と持続可能な成長に向けて ~日本と日本人が出来ること~」。バングラデシュへの旅立ちを前に、「所信表明」も兼ねて、僕から、バングラデシュの開発課題、日本人のボランティア、NGO、起業家、JICAが果たしてきた役割、そして世銀のバングラデシュでの立ち位置と自分自身の目標などについて、「Global Issuesの解決に向けて ~ 日本人が世界との「つながり」を見出し、協働していくには?~」と題するプレゼンテーションをする機会を得た。

      Crossover21 ディスカッション大会の様子
  (冒頭にプレゼンテーションをする著者。世界銀行東京事務所のTokyo Development Learning Centerをお借りした)


 以下、自分の内なる北極星に、バングラデシュでの自分自身の日々の行動をしっかりとつなぎとめるために、Crossover21の場で参加者の皆さんと共有した自分の問題意識を改めて整理していきたい。



「何故、国家公務員という立場をいったん離れ、グローバル益を追及する国際機関、世銀での勤務を希望したのか?」 

 『世界で生きる力 ~自分を本当にグローバル化する4つのステップ~』という素晴らしい本がある。その著者マーク・ガーゾン氏が冒頭に記している認識は、留学から戻って以降、財務省の国際局で働く中で感じた認識と重なるものであり、僕を今の場所に導いた問題意識を生み出す出発点でもあった。

 「私たちは皆、一生顔を見ることも無く、その言語も解さず、その名を聞いても分からないような人々の判断や行動に大きく影響を受けており、そうした人々もまた、私たちの影響を大きく受けている」 

 21世紀を生きる僕らは、例えばこんな問と向き合わなければならない。それは政策担当者だけでなく、ビジネス・パーソンに、メディアに、そして生活者に対して、共通に、容赦なく突きつけられる。

 「なぜ、カリフォルニアで住宅ローンの返済が大量に滞ると日比谷公園に派遣村が出来、さらに、最貧国で6,400万人が新たに絶対的貧困に陥ってしまうのか?」

 2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻した際、その3ヵ月後には、日本の電気製品や自動車の工場で製造ラインを担ってきた多くの人々が職や住まいもないまま、年を越さざるを得ない事態が発生すると想像した人は、おそらく殆んどいなかったのではないか。米国企業への部品納入や、米国消費者の旺盛な購買意欲に日本経済がそれ程までに依存していたという事実を、米国発の「Financial Tsunami」は露わにしたのだった。

 それだけではない。米国発の「Financial Tsunami」の影響で先進各国の景気が大幅に後退。途上国に対して積極的に展開されてきた先進国からの投資や、NGOへの寄付、途上国から先進国への輸出も激減。これにより、多くの途上国で援助や税収の低下から、例えば、公立学校への無料給食の提供サービスや、失業者への給付金提供などが停止に追い込まれる。この結果、途上国において、金融危機がなかったときと比較して、新たに6,400万人もの人々が、一日2ドル以下の絶対的貧困に陥ることになる。

 こんな「風が吹けば桶屋が儲かる」の悪夢版のようなシナリオが、凄まじい規模とスピードでもってグローバルに展開されていく。

 ○ この巨大な津波の影響を少しでも和らげるには何が必要か?
 ○ そもそも危機の原因は何だったのか?
 ○ 将来の再発を防止するには、どのような仕組みが必要だろうか?

 G7やG20等の国際協調のプラットフォームの場において、あるいは、IMF、世銀の理事会の場等において、こうした問と向き合って議論し、有効と思われる解決策を実行に移していくことに追われたのが、財務省国際局での3年間だった。グローバル金融危機以外にも、豚インフルエンザ等のグローバル感染症、欧州債務危機、中東の「アラブの春」等、どれをとっても、「一生顔を見ることも無く、その言語も解さず、その名を聞いても分からないような人々の判断や行動に大きく影響を受けており、そうした人々もまた、私たちの影響を大きく受けている」という認識を持たざるを得ないイベントばかりが次々と起こった

 よもやNational Interest(国益)とGlobal Interest(グローバル益)の重なり合う範囲は、未だかつてなく広く、そして深くなっている。そうであるならば、これから自分が日本の国創りを担っていく上で、より一層Global Issueへの感度を高めていくことが必要ではないか?財政・金融やマクロ経済だけでなく、公衆衛生や気候変動、雇用、教育、食料等、様々なセクターにおけるグローバル・イシューの相互作用を理解し、セクター横断的な解決策を見出していくことが必要ではないか?

 そのために、留学後4年目、30代前半という時点において、自分はどこに身を置くべきか?

 こんな自問自答の結果浮かび上がってきたのが、2010年夏から1年間、パートナーとして仕事を共にしていた世界銀行という組織だった。

 「貧困削減と持続可能な成長」をミッションに、教育・農業・食料・栄養・気候変動・インフラ整備・マクロ経済・水管理・防災・民間セクター開発、ガバナンス等、様々なセクターで専門性を有する1万人を超える職員を擁する組織。

 先進国を初めとするドナーから単に援助資金を「もらう」だけでなく、その資金を資本金としてレバレッヂをかけてトリプルA格の世銀債を発行し、グローバル金融市場から資金を調達できる資金動員力を持つ組織。

 さらに、そうして集めた資金を途上国に「あげて」しまうのではなく、市場金利と比較すればaffordableな金利や手数料を付して対象国に貸し付けることを通じて培われる資金管理力を持つ組織。

 世銀は、現状の世界において、グローバル・イシューを解決するために必要なリソースを最も多く有している国際機関の一つだ。日本は第二の株主として、グローバル・イシュー解決のために、この組織を有効に活用しない手はない。

 こうした世銀というグローバルな人間集団の中に飛び込んで、組織の生態系や強み・課題を理解し、そこで活躍する人々と密な絆を作り、そして、自分自身がグローバル・イシュー解決のプレーヤーとして課題と向き合う経験を積んでいけば、日本のNational InterestとGlobal Interestが重なり合うSweet Spotを見極め、セクターを越えて必要なリソースを動員し、課題解決に向けて前進していける、21世紀のPublic Policyの担い手として必要なスキル・セットを身につけていくことが出来るのではないか?
 7月11日のCrossover21の場ではこんな思いを語った。

 もう一つある。

 それは「他流試合」の実践を通じた自らの能力向上だ。
 
 留学から戻って3年間、降りかかる仕事と無我夢中で向き合っている中で、周囲の同僚や上司・部下にも恵まれたこともあり、ある程度、仕事がスムーズに回せるようになってきた。しかし、それは、自分が周囲に恵まれ、組織特有のお作法や人間関係などに慣れてきただけであって、いざ、他の組織で働くことになったら、ちっとも上手く貢献できないのではないか?自分が所属する組織とは全くカルチャーの異なる場で「他流試合」の機会を得ることで、自分のエッジをより鋭くし、また足りない部分の補い方を学ぶことが出来るのではないか?もと居た組織の強みや弱みを再発見できるのではないか。 

 この点、世銀は、日本の多くの大組織(財務省も含まれるだろう)に共通の「組織で仕事をする」というカルチャーと、対極のカルチャーを持っている。

 基本的に異なる専門性を有する個人商店の集まりであり、仕事は、プロジェクト・ベースで関連する専門家が離合集散する形で進められる。反面、情報の共有や引継ぎ等は、積極的にはなされているとは言い難い。

 また、職員の殆どが終身雇用の公務員、しかも男性が大半(そして日本人のみ)である財務省とは比較にならないDiversity(多様性)に満ちており、英語だけでなく、様々な言語が飛び交い(残念ながら日本語は僕の独り言以外は飛び交わない…)文化的・宗教的にも多様な職員で構成されている。Work-Life BalanceやGender Issue等への配慮も日本の典型的な大組織とは比較にならない。

 異動・昇進等についても、組織の人事課が一元的に面倒を見る日本の多くの企業・官庁と異なり、世銀では、空きポストが生じると、給与水準、Job Description等をまとめた「求人広告」が全職員宛にイントラネット等を通じて共有される。そのポストに興味のある職員は、自分の履歴書に志望動機等をまとめたLetterを添えて担当者に提出。書類審査と面接を経て選ばれて初めて、そのポストにつけることになる。逆に言えば、こうした「社内就職活動」をしなければ、昇進もなければ異動もない。今のポストに任期があれば、その任期が切れた途端、世銀との縁も切れることになりかねない。こうした人事制度を採っていることから、日本の典型的な大組織と比較すれば、より競争的なカルチャーであるといえるだろう。

 つまり、「他流試合」をするにはうってつけの組織だと言える(「うってつけ」等と強がっていられるのも、最初のうちだけかもしれないけれど)。

 こんな想いを胸に今、僕は世銀職員のネーム・タグを肩からぶら下げている。
 ネーム・タグの賞味期限は2年だ。今から約2年後、「成長し、貢献した」という充実感と納得感を持って、帰国の途につけるか、それは一日一日の過ごし方にかかっている。

      Crossover21スタッフに囲まれて

 (7月11日、Crossover21ディスカッション大会の二次会で、飛び切りの笑顔のスタッフと抱えきれない程の花束に囲まれて)
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バングラデシュが教えてくれた大切なコト | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2011/09/15 22:47
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