スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | --/--/-- --:--

政情不安は何故繰り返されるのだろうか?

日本は目前に迫る衆議院総選挙で盛り上がっているが、ここバングラデシュも政治がアツく燃え盛っている。単にアツく舌戦が交わされているのではない。物理的に、燃え上がっているのだ。

 先週来、野党によるホルタル(Hartal)が続いている。12月4日の火曜日を皮切りに、今週に入り日曜日には道路封鎖、本日火曜日に再びホルタル、明日は大規模デモ、明後日もホルタル、そして来週火曜日もホルタルが予定されている。
 
 このブログの読者で、これまでバングラデシュで暮らしたり、訪問した事のない皆さんにとっては聞き慣れないであろうホルタルという言葉。南アジアの共通用語で、政治的な抗議行動を意味する。要はデモやストライキだ。デモなら日本でも、脱原発等、多くの市民の参加を得ながら様々なテーマで実施されているが、バングラデシュのデモは一味もふた味も違う。以下のような光景がダッカ市内はもちろん、国中のあちこちで展開するのだ。

    hartal
   ~ ホルタルで焼き討ちにあったバスの車体(写真出展:banglanew24.com)~

hartal 4
  ~武装警官隊と衝突する野党支持者(およびその様子を必死で撮影するジャーナリスト魂逞しいカメラマン)(写真出展:Priyo News))~

 野党がホルタル実施を宣告すると、世銀をはじめ多くの国際機関や企業で、従業員の外出自粛令が出される。何しろ、ホルタルに参加する活動家たち(その多くは野党各党が各大学に置くチャットロ・リーグと呼ばれる学生団体に加盟する学生たち)が、機動隊や警官隊と衝突するだけでなく、道行くバスや乗用車を鉄パイプで破壊し、火炎瓶や手作り爆弾で火を放つ等、危険極まりない暴力行為が市内あちこちで発生するためだ。例えば、ホルタルの“前哨戦”として実施された12月9日の「道路封鎖」では、警官隊とデモ隊との衝突等により死者4名、重軽傷者約600名を出し、そして約250名が逮捕された。

 もちろん、ダッカ市全体でこうした暴力行為が発生している訳ではない。我が家のある大使館街のバリダラ地区や外国人や富裕層が多く住むグルシャン地区、ボナニ地区は、こうした騒動とは無縁の様相だ。ただ、クラクションが鳴り響き、車やバス、リキシャがひしめき合っている普段の道路とは打って変わって閑散としているけれど。

 しかし以上の三地区を除けば、ホルタル実施中のダッカは緊張感に満ちている。大量の機動隊と警察が動員されており、いつどこで、どのような衝突が発生するか予測できない。デモは外国人をターゲットにしたものでは決してないが、対象が無差別なので、騒動に巻き込まれる可能性は否定できない。事実、9日には、ダッカ市西部のバス・ターミナルのあるガプトリ地区で乗用車で移動中だったドイツ人女性がデモ隊と遭遇、彼女はほうほうの体で逃げ延びたものの、運転手は頭に血の上った活動家に暴行を加えられ、車は破壊されて火が放たれた

 ホルタルが長引けば物流が滞りダッカ市内に野菜や果物が入ってこなくなる。作り上げた商品の出荷が出来ず納期に間に合わなくなる。シャッターを下ろさざるを得ない工場、企業、商店で働く従業員の日当は直接打撃を受ける。うっかり運転をしようものなら格好の標的になりかねないため、バスやCNG(天然ガスで走る自動三輪)の運転手らも日銭をあきらめざるを得ない。外国からの出張者の予定は全てキャンセルとなり、コストと時間をかけてやってきたその人は、残念ながらホテルで一日を過ごすことになる。

   hartal3
  ~ ホルタル参加者が投げ付け、路上で燃えあがる火炎瓶(写真出展:Daily Star)~

 バスが燃え上がり、野党支持者と機動隊が激しく衝突する場面がBBCで報道されれば、ただでさえ良いとはいえないバングラデシュの外からのイメージはますます悪化し、国外からの投資意欲にも水を差すだろう。とにかく、断続的に発生するホルタルは、バングラデシュの経済や日常生活に甚大な悪影響を及ぼす。ちなみに、僕がここ2ヶ月、力を入れて準備に取り組んできたバングラデシュ政府と世銀共催のイベントもあっけなく無期延期になった…力が抜ける事この上ない。

 ベンガル人・外国人問わず皆を不幸にするホルタル。では、これを先導しているBNP(Bangladesh Nationalist Party)主導の野党連合はいったい何を求めているのだろうか。名目は多々あるが、過去2年近く主張されているテーマが、総選挙における中立的な選挙管理内閣(Care Taker Government)設置を求める憲法条項の復活だ。

 バングラデシュの憲法には、現与党・政府が職権を乱用して公正な選挙活動を妨害したり、結果を操作したりしないよう、前最高裁判所の長官をトップとする、選挙実施のみを目的とした暫定内閣を、議会解散後に任命することを定める条項が、1996年の改正により盛り込まれていた。中立・公正な選挙の実施と、勝者・敗者双方が投票結果を受け入れることは、多くの途上国にとって難しい課題だ。国際社会の介入が必要となる場合も多く、最悪の場合、内戦に発展するケースも少なくない。この点、バングラデシュ憲法に盛り込まれた「選挙管理内閣設置条項」は、民主主義を機能させるための賢い仕組みだと言えるだろう。

  bangladesh parliament
 ~1964年に建てられたバングラデシュの国会議事堂。米国の著名建築家ルイス・カーンが手がけた幾何学的なデザインと湖に映るシルエットが美しい。しかし、美しい建物の中で展開される政治の実情は、如何なものだろうか…~ 

 ところが、2009年の前回選挙で地滑り的な圧勝を収め、憲法改正に必要な三分の二議席を大幅に上回る300議席中262議席を勝ち取ったアワミ・リーグ率いる大連合が、その条項を2010年6月に廃止してしまったのだ。惨敗し少数派に転落したBNPを中心とする野党各党は、「このままでは公正な選挙は決して期待できない」として、条項の復活を強く主張、国会の論戦へのボイコットを続けるとともに、断続的なホルタルにおける一大テーマと位置づけ、現政権に揺さぶりをかけているのだ。その他にも政府による燃料補助金引き下げ反対や、食料価格の高騰への政府の無策等、その時々の人々の不満の種をテーマにホルタルは実施されるが、殆どのダッカ市民はホルタルを中心とする非生産的な動員政治に辟易としているのが実態だ。

 ちなみに、バングラデシュはアワミ・リーグとBNPの二大政党が争う政治状況にある。一院制の国民議会の任期は5年であり、民主化が実現した1991年から1996 年がBNP、その後2000年までがアワミ・リーグ、そして再びBNP(2001年~2006年)、そして直近2009年の選挙ではアワミ・リーグが勝利、というふうに、選挙のたびに政権交代が繰り返されている。両政党が(と言うよりも両政党の女性党首同士が)喜劇ともいえる情緒的且つ非生産的な衝突、確執を繰り返している様は、バングラデシュ赴任直後にアップした記事「8月15日は喪に服すべきか、国民総出でお祝いをすべきか?」を参照されたい。そして、お互い与党時代は、野党によるホルタル実施を強く批判し取り締まる一方で、下野すれば馬鹿の一つ覚えのようにホルタルを展開しているのだ。

 こうした状況が続く中、心あるバングラデシュの有権者の多くから、「第三極」の到来を待ち望む声は大きい。そして、実際そうした声に行動で応えようとしたのが、グラミン銀行のユヌス博士だった。しかし、結果は既に周知のとおり。政党発足の目論見は実現せず、政権から警戒されたユヌス博士は、「法定年退職年齢を超えて務めているから」という事務的な理由で、グラミン銀行総裁の座を追われることになった。

 そして次の選挙は約1年後、2014年の1月とされている。選挙が近づくにつれ「選挙管理暫定内閣条項の復活」をめぐる与野党のつばぜり合いは、バングラデシュの経済や人々の生活に大きな犠牲を強いながら、拡大、頻発していくだろう。こうした状況では、現在のバングラデシュの喫緊の課題である発電所や港湾整備等の大型インフラ整備に必要な外国資本も入りづらくなる。バングラデシュが目指す「2021年までの中所得国入り」の目標実現は遠のくばかりだ。

 二大政党間の不毛なネガティブ・キャンペーン、多数派の専横、暴力的な示威行動…こうした未熟で不安定な政治の変革については、世銀等の援助機関や日本などのパートナー国の手に有効な梃子はない。部外者は静かに見守り、状況に適応するしかない。変革は、その国の内側に望むしかないのだ。そして無論、それは日本も同じだ。(終わり)
スポンサーサイト
バングラデシュでの生活が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/12/11 03:47
コメント:

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。