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グラミン銀行 ~信頼を基盤とする金融は如何にして創られるのか?(その4)~

◇グラミン銀行は顧客に如何なるサービスを提供しているのか(続)

 グラミン銀行をはじめ、マイクロ・ファイナンスの金利水準は常に論争の的だ。対象とする顧客が、土地や資産も持たない途上国の低所得者層であることから、金利の徴収は「搾取」の同義語と捉えられやすい。実際「ノーベル平和賞と持て囃されているけれど、マイクロ・ファイナンスの金利は日本の消費者金融と同じか、それ以上だ」と批判する声は強い。また、「実質的には額面よりも高率の金利を課している」、「金利設定が複雑過ぎて、貧困層はもちろん、その国の規制当局や、先進国のドナーにとっても分かりにくく不透明」といった意見もある。なぜなら実際に顧客が支払う総額は、例えば借入元本のみに課される単利なのか、利子分も含めて計算される複利なのかによって大きく異なるし、金利以外に「手数料」や「保険料」を徴収する、あるいは半ば強制的に貯蓄を奨励する機関もあるからだ。  

      Grameen Branch 1 
  ~タンガイル県ゴライ・ユニオンのグラミン銀行の支店で、エリア・マネージャーをはじめ、グラミン銀行のスタッフと議論するCrossover21のメンバー~     

 他方で、言うまでも無く、金利は事業を継続していくための基盤となる利益の源泉だ。「貧困撲滅」という美しいビジョンを掲げても、利益を上げていかなければ、自律的・持続的に事業を継続することは不可能であり、ビジョン実現に自らを近づけていくことは出来ない。従って、顧客に対して課す金利水準は、金融機関自身の資金調達コストから始まり、人件費、支店の開設・運営、そしてシステム維持等に必要となる経費や貸し倒れに備えた引当てといった様々なコストを十分にカバーできる水準とする必要がある。

 借り手の生活水準向上の力となりつつ、自らの事業基盤を確立する「適切な」金利水準、そして、貧困層を顧客とすることに伴う倫理的な批判にも応えうる「正しい」金利水準はいくらなのか、難しい問だ。

 前置きがやや長くなったが、グラミン銀行の最も標準的な商品である「Basic Loan」の金利は20%だ。これに5%の「強制預金(obligatory savings)」がついてくる。つまり、資金を借り入れる際に5%(1万タカを借りた場合には500タカ)が差し引かれて、顧客名義の口座に預金されることになるのだ(但し、このうち半分は即時に引き出しが可能で、残りは少なくとも3年間引き出し不可であることから、真にObligatoryなのは2.5%分のみ)。

 ここで、日本の代表的な消費者金融であるアイフルのウェブサイトを開いてみると「実質金利6.8%~18%」というメッセージが目に飛び込んでくる。こうした数字をもって「グラミン銀行は日本の消費者金融以上の金利を月収1万円にも満たないバングラデシュの農村部の女性たちに課し、搾取している」という批判が展開されることになる。

 これへの典型的な反論は、「グラミン銀行がサービスを始める前、村の貧困層は、200%もの金利を要求するLoan Shark(高利貸し)から借り入れていた。これと比較すれば、20%(+2.5%の強制預金)は十分安い」というものだ。これは確かにその通りだ。が、これだけでは、「それは比較の対象がおかしい。グラミン銀行設立から既に30年が経過し、数多くのマイクロファイナンス機関が業務をしている現在もなお、マイクロ・ファイナンス業界は、高利貸しを代替するような存在なのだろうか。途上国の貧困層向けマイクロ・ファイナンスが、日本の消費者金融以上の金利を取るのは、矢張り搾取だ」という批判に十分に応えられない。
 
 では、グラミン銀行の「金利20%」という水準を、他のマイクロ・ファイナンス金融機関と比較してみよう。以下のグラフはバングラデシュのお隣のインドで活動する87の主要マイクロ・ファイナンス機関が提供する235のローンの金利水準とサイズについてまとめたグラフだ。作成者は「真に貧困削減に資するマイクロ・ファイナンス事業の実現を、金利設定の透明性の追及を通じて実現する」ことをミッションに活動をしているMicrofinance TransparencyというアメリカのNPOだ。 
 india MFI Interest Rate 
 ~インドの主要マイクロ・ファイナンス機関の金利水準とローンサイズ(出展:Microfinance Transparency)

   縦軸が金利水準(%)、横軸が平均ローン・サイズ(ルピー)を示している。ちなみに、ここで言う「金利」とは「額面の年率金利」に「手数料」、及び「強制預金」を合わせたものだ。これを見ると、インドの主要マイクロ・ファイナンス金融機関の金利水準は、おおむね25%から35%の範囲にあること分かる。

  同じ事柄について、エクアドルの30 機関、フィリピンの40機関について、それぞれ見てみよう。  
 
 Ecuador MFI Interest Rate 
~エクアドルの主要マイクロ・ファイナンス機関の金利水準とローンサイズ(出展:Microfinance Transparency)~

  Pillipeans MFI Interest Rate
 ~フィリピンの主要マイクロ・ファイナンス機関の金利水準とローンサイズ(出展:Microfinance Transparency)~

   グラフが示すように、エクアドルは15-40%の間でばらつきがあるが平均25%程度、フィリピンに至っては平均は100 %前後となっている。ちなみに、バングラデシュのマイクロファイナンス業界の規制・監督機関であるMicrocredit Regulatory Agencyが2011年6月に導入した金利の上限規制は27%だ。こうしてみると、グラミン銀行の金利水準は、マイクロ・ファイナンス業界の平均値を下回る水準であることが分かる。

 また、マイクロ・ファイナンスの金利に対する批判は日本等の先進国の貸金業の金利水準との単純比較でなされることが多いが、途上国のマイクロ・ファイナンス機関の金利が「適切で」、「正しい」ものなのかは、その事業環境についても考える必要があるだろう。例えば以下の数字を見るとどうだろうか。

 - 政策金利  バングラデシュ:7.75%、  日本:0-0.1%
 - インフレ率(前年同月比の消費者物価指数) 
        バングラデシュ:10%前後、日本:マイナス0.4%
 
   上記で紹介したグラミン銀行及び他の新興国・途上国のマイクロ・ファイナンスの金利水準は物価上昇分を加味しない名目ベースだ。インフレ率を差し引いた実質ベースで見ると、大分風景が違って見えるだろう。また、債券発行や借入れによるマイクロ・ファイナンス機関自体の資金調達コストも、先進国と比較すれば相当程度割高だ。こう見ると、マイクロ・ファイナンスに限らず、先進国の金融業と途上国の金融業の金利水準を額面で単純比較することは、そもそもナンセンスだということになる。

   さらに、金利水準の妥当性について判断するには、利率だけでなく金利を課す方法についても注意深く観察する必要がある。この点グラミン銀行の20%の金利水準は、元本のみにかかる単利だ。そして、借入当初の元本額をベースに返済終了まで同額の金利の支払いが発生する「Flat Basis」ではなく、資金返済が進むに従って減っていく「未返済の元本額」に対してかけられる「Declining Basis」で計算される。グラミン銀行のウェブサイトでは、この点がバングラデシュの政府が運営するマイクロ・ファイナンスの利率との比較で強調されている。即ち、政府のマイクロ・ファイナンス金利は11%とされているものの「Flat Basis」であり、グラミンが採用している「Declining Base」で再計算すると22%となるという。  グラミン銀行のほうが官制マイクロ・ファイナンスより安い、という訳だ。

    こうしてみると、持つべき疑問は、「グラミン銀行の金利は高く過ぎるのではないか」ということではなく、むしろ「何故、グラミン銀行の金利は他のマイクロ・ファイナンスと比較して低く抑えられているのか?」ということなのかもしれない。そして、その答えは、グラミン銀行が、実はマイクロ・ファイナンス機関ではない、という点にあるのだ(続く)。
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バングラデシュのソーシャル・ビジネスが織り成す物語 | コメント:(1) | トラックバック:(0) | 2012/10/25 20:26
コメント:
No title
納得しました。

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