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グラミン銀行 ~信頼を基盤とする金融は如何にして創られるのか?(その2)~

 ◇ 誰がグラミン銀行の顧客なのか?(続)

 グラミン銀行からいつ、いくら借入れをし、それを何に使っているのか、その結果、生活はどのように変化したのか、 タンガイル県のジョイエルパーラ村に軒を構えるグラミン銀行の「借り手センター」に集った約60名の女性達に対して、Crossover Bangladesh Study Tripのメンバーは、ランダムに尋ねていった。

 ちなみに、1983年に制定されたGrameen Bank Ordinance(グラミン銀行法)は、その機能について定めた19条で、貸付け対象をlandless persons(土地無しの人々)と限定している。さらにグラミン銀行の内部規定は、最初に借入れ申請をする段階で土地、その他資産を持たない、自ら働くことが出来る程度に心身が健常で、管轄支店区域内にPermanent Addressを持つ18歳以上の人に対して融資を実施すると定めている。僕らの目に前に居る女性達は、つまり、そういう人たちだ。

    Grameen Borrower's Center-1
 ~グラミン銀行の「センター」に集まった女性達。彼女たちが手に持っているグリーンのシートには、それぞれの借入れ状況・返済履歴等が記されている~

 最初に立ち上がって質問に答えてくれたのはソ二アさんという恰幅のいいおばちゃんだ。現在村で雑貨屋を営んでいる彼女は、10年前からグラミン銀行のローンを活用しており、現在の借入額は10万タカ(約10万円)。バングラデシュの、例えばベテラン小学校教師の給与が8,000タカ、僕の家で働いてくれているコックさんの月給が1万2千タカであることを考えると、ちょっとびっくりするよう額だ。しかし、毎週2,500タカを確実に返済しているという。彼女が10年前に初めてグラミンのローンを利用した際の借入れ額は3,000タカだったそうだ。その時は住んでいた家は小さく、生活は家族が食べていくだけで精一杯だったが、現在は4軒の家を持ち、水道システム、トイレ、電気、テレビが備わっているという。
  
 次は答えてくれたナズマさんも、8年という比較的長い借入暦を持つ女性。借入額もソニアさんと同じ10万タカで、毎週2,500タカを返済しているという。借りたお金で牛を買い、日常的なミルク販売、及び年に一度の犠牲祭(富裕層が牛を大量に買い入れて街中で捌き、貧困層に分け与えるイスラム教徒の祭り)向けに牛を市場に出す商売を営んでいるという。昔はトタンと木の枝葉で作った粗末な家だったが、今は清潔なトイレもついたレンガ造りの家に住んでいるとのこと。一人息子と二人の娘は皆High School(中学校)を卒業し、それぞれ結婚した。ちなみに、バングラデシュで中学校を卒業するのは10人中4人程度に過ぎない。
     
     Grameen Borrower's Center -2
    ~グラミン・ローンを元手にはじめた牛関連の自営業が生活にもたらした変化について笑顔で語るナジマさん~
   
 三番目の女性は小さな男の子を連れたロシナさん。2年前にグラミン銀行の融資を受けたばかりで現在の借入額は12,000タカ。彼女も借りたお金を元手に牛のミルクを売る仕事をしており、一週間で300タカ、一月1,200タカを返済するとともに、毎週30タカの貯蓄もしている。これから仕事の幅を広げし、一人息子の教育や家の建て替えの費用を工面したいという。

 続く女性はクッキー作り、その次の女性は米の脱穀や加工の自営業を営んでおり、それぞれ1万タカのローンを毎週250タカずつ返済するとともに、毎週50タカを貯蓄しているとのことだ。このようにセンターに集まった女性達の間で借入額に大分差があるようだったが、グラミン銀行のウェブサイトによれば、2010年現在の平均貸付金額は約10,000タカということだ。

 なお、グラミン銀行が融資に当たって、同じような経済的・社会的な境遇にある“ご近所さん”同士で「5人組」を作るよう女性に求めることは良く知られている。そして、このセンターはそうした「5人組」が12グループ集まって毎週ミーティングを行う場であることも前回の記事で触れた。ここで重要なポイントは、グラミン銀行の融資は「5人組」に対しでは無く、あくまで個人に対して実施されるということ。つまり「5人組は」、仮にグループの誰かが貸し倒れた場合に、他の誰が保証しなければならない、といった連帯保証の仕組みではないということだ。



(注) この点は僕も誤解をしていましたが、極めて重要なポイントですのでグラミン銀行ウェブサイト上の出展と併せて紹介します。
 Grameen Bank At A Glance
 3.0 No Collateral, No Legal Instrument, No Group-Guarantee or Joint Liability
 Although each borrower must belong to a five-member group, the group is not required to give any guarantee for a loan to its member. Repayment responsibility solely rests on the individual borrower, while the group and the centre oversee that everyone behaves in a responsible way and none gets into repayment problem.


 では、「5人組」の役割とは何か?グラミン銀行の幹部は、本店で僕らに示したプレゼンテーションで「Peer Support & Close Supervision」と言う言葉で表現した。即ち、お互い助け合い、学びあい、そして規律付け合うためのグループ、ということだろう。このセンターが、各グループの借入れ・返済状況の共有だけでなく、自営業を営む上でのベスト・プラクティスを学びあう場であることは既に述べたが、ここで少し深堀りして紹介したいのが、「5人組」のメンバーを「規律付け」るための方法だ。

 女性達が5人組をつくり、そのグループがグラミン銀行に承認されても、全員がすぐに借入れを出来るわけではない。5人のうち2人がまず借入れをし、両方が6週間連続で、利子と元本部分について、毎週、期限内に必要な返済をした場合に限り、残りの3人が借りられるようになるという仕組みが採用されている。当然、残りの3人は最初の2人の借入れ動機、借入額返済スケジュール等について、相当の注意を持って観察するだろう。無茶な内容であれば、最初から借入れをさせないかもしれない。そうでもしなければ、自分が必要とするローンを借りられなくなってしまうのだから。こうした仕組みにより、「5人組」に結成当初から、一定の規律が生み出される。こうした規律が、人と人との距離が物理的にも精神的にも極めて近いバングラデシュの農村部の状況と相まって、強固な貸し倒れリスク管理のメカニズムとして働くことになる。しかし、繰り返しになるが、借りるのは個人、返済するのも個人なのだ。周囲は、正しい行動を動機付ける存在でしかない(無論、緊急の場合に、お互い資金を融通しあうことはあるかもしれないが、それはグラミン銀行の公式の融資メカニズムではない、あくまでも非公式の相互扶助だ)。


 話を、ジョイエルパーラ村の借り手センターに戻す。Crossoverのメンバーから借り手の女性達への個別の質問が一息つくと、僕らを引率してくれているグラミン銀行マネージャーのモーシェッドさんは、女性全員に対して、幾つかの質問を投げ掛けていった。まず、子供の数を聞いてみる。すると、一人っ子が6人、二人が16人、三人が12人、四人以上は一人、という結果だった。また、携帯電話の所有を尋ねると全員の手が上がる。他にも、以前と比べてイードのお祭りの際に実家に持っていける土産が多く買えるようになったとか、昔は服も十分な数なかったが、今では、外出に当たって服の色に合わせてサンダルを選べるようになったとか、景気の良い話が色々聞こえてくる。 また、グラミン銀行から資金を借りて女性自ら事業を始めることについて、夫をはじめとする家族の反応を尋ねてみても、皆、一様に好意的だった、との回答が返ってくる・・・

 その後、僕らはモーシェッドさんと共に借り手の女性達の家を数軒お邪魔する機会を得た。どれも、レンガ造りのしっかりとした建物で、テレビや天井のファン、綺麗なベッド、そして水で流すことの出来る清潔なトイレや立派な井戸も整備されている。モーシェッドさんは、自信満々の様子で説明をしながら、我々を連れて回る。そして、感心しつつも若干腑に落ちない僕達がいた。

 「余りにも出来すぎのストーリー・・・本店の偉い人が外国人一行を連れて来るということで、皆口裏を合わせているんじゃないか…宣伝用に、特に上手く回っているセンターに連れてきただけじゃないのか??」

  Grameen Borrower's House
 ~ グラミン銀行の借り手の家々を案内しながら、「どうだ、グラミン銀行はスゴイだろ」と言わんばかりの自信満々の説明を続けるモーシェッドさんを囲むCrossoverのメンバー ~ 

 そんな、もやもやとした疑念は、従来の金融の常識とはかけ離れたグラミン銀行の金融サービスのライン・アップについて、村の支店で聞いていくなかで、少しずつ晴れていくことになった。次回の記事では、モーシェッドさん、支店の職員の方々から伺ったお話、及びグラミン銀行のウェブサイトにまとめられている情報を下に、グラミン銀行が現在顧客に提要しているサービスの概要及びサービスを提供する際の方法について紹介していきたい(続く)。
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バングラデシュのソーシャル・ビジネスが織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/10/15 01:15
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