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Crossover21 バングラデシュ・スタディ・トリップ 報告⑧~農村の若者たちが教育機会を手にするには何が必要か?(その3)~

 「首都圏と比べ、経済的・社会的・地理的に圧倒的に不利な立場にあるバングラデシュの田舎の高校生の手元に、よりよい教育機会を届け、彼らの可能性に火を灯したい!」

 こんな初志を貫き、商業ベースでの受講料設定を求める日本の大手企業との連携をご破算にしたマヒンとアツ。その前には、事業の持続可能性確保という大きな壁が立ちはだかった。いくら社会的に意義のある取組みでも、コストをリカバーするための資金を継続的に確保することが出来なければ、志を貫き通すことも、社会に変化を齎すこともできない。

 アルバイトで稼いだポケット・マネーも使って、不安を胸に抱きながら東奔西走していた折、彼らの前に新たなエンジェルが現れた。それは、東京大学のある研究室だった。E-Educationにかける二人の若者の意欲だけでなく、当プロジェクトの経済・社会開発上のポテンシャルに強い興味を持った研究室の教授は、E-Educationをインパクト評価の対象とすることで、その効果を学術的に検証しつつ、彼らの活動の継続を支援するための資金を提供するオファーを提示したのだった。

   e-educadtion-2
~バングラデシュの高校生用の英語の問題集。難解な単語が並ぶ。バングラデシュの大学受験は徹底的な暗記と短時間で大量の択一式課題を正解していくための要領のよさが求められるという~


 インパクト評価とは、ある開発プロジェクトが、如何なる経済・社会的な効果をもたらしたのかを、統計的に分析・検証する手法だ。客観的な証拠に基づいたプロジェクトのデザイン(Evidenced-based project design)、そしてプロジェクトに資金を提供するドナーへの説明責任の強化が求められる中で、近年その手法の精緻化や対象の拡大が世銀やJICAでも求められている。

 例えば、「職業訓練の提供による若者の雇用支援プロジェクト」にインパクト評価を適用したとしよう。目指すゴールは「職業訓練の結果、若者が仕事に就くこと」だ。さて、このプロジェクトのインパクトはどのようにして計測できるだろうか。訓練を修了した若者へのアンケート調査は典型的だが、これにより仮に「100%の受講生が就職先を見つけた」との結果を得たとしても、それが本プロジェクトによって得られた成果だと、説得力を持って主張できるだろうか?プロジェクト以外にも様々な要因が考えられる。たまたま、その年に景気がよくなって求人が増えただけかもしれない。訓練校の近くに偶然、大きな工場が進出したからかもしれない。あるいは、そもそも、自主的に職業訓練を受けようと考える若者が、そうでない若者よりも、元々意欲や能力が高かったせいかもしれない。とにかく、様々な要因が考えられ、終了後のアンケート調査の結果だけでは、プロジェクトが真に効果があるもの(言い換えれば、金と人を投じるに値するもので、今後も引き続き実施すべきプロジェクトである)と主張するのは難しい。

 そこで、プロジェクトを開始する前に、同じ属性を持つ集団から、ランダムに、プロジェクトの対象者と非対称者をピックアップし、プロジェクト実施前の段階での彼らの学力やスキル、就業への意欲等を測定(これをベース・ラインと呼ぶ)、プロジェクト実施後の段階でのそれと比較する。このように「プロジェクトの前/後(before-after)」、「プロジェクトの有り/無し(with-without)」の二つの視点から集団の特徴の変化を観察することで、より精緻にプロジェクトの効果を検証できる。無論、集団のピックアップや測定項目の決定や定手法、そして測定した結果の検証については、統計学の知識に基づく専門的な手法の適用が求められる。

 東大の研究室はこうした手法を使って、E-Educationプログラムが農村部の若者の学力・意欲の向上と大学進学に寄与する効果を検証するべく、マヒンとアツにアプローチをかけたのだった。つまり、経済的な動機で出資をオファーした企業の次に登場したエンジェルは、学術的な動機付けで彼らとのパートナーシップを模索したという訳だ。とにかく、これにより、E-Educationプログラムは、初年度同様、受講料無料で村の若者にサービスを提供できることとなったのだ。


 こうした経緯を経て今年立ち上げ3年目を迎えたE-Education プログラムは、マヒンの生まれ故郷であるチャンドプール県に設けられた4つの教育拠点において、578 人の高校生に対して、英語、会計、経営学、ベンガル語(国語)、国際関係、バングラデシュ政治・経済の6科目をビデオ講座形式で提供している。こうした拠点において受講生やプログラムの管理をするスタッフは現在16名、うち2名が有給のフルタイム・スタッフだ。このように、E-Educationは二人の若き社会起業家のパッションとイノベーション、そして、それに共感した外部のパートナーの手によって、その基盤が整いつつあるように見える。
   e-education
 ~2-3人で1台のパソコンと向き合い、E-Educationプログラムの講座を学ぶチャンドプールの高校生~

 しかし、東大の研究プログラムの期間は2年。つまり、マヒンは「如何にして事業を継続するのか」という難題との格闘から解放された訳ではない。幸運にも東大に続く新たなエンジェルが三度舞い降りたとしても、外部の支援者に経済的に依存する状況が続けば、外部者のモチベーションに引っ張られて、自らのコア・ミッションの追及が難しくなる。他方でE-Educationの顧客層である経済的・社会的に不利な環境におかれている農村部の学生たちに、まとまった受講料を払う余裕は無い。マヒンの試行錯誤は続く。

 「E-Educationのプログラムと、小額のマイクロ・学資ローンを組み合わせて受講生に対して提供することで、E-Educationを真に必要としている若者にサービスを届けつつ、事業の持続可能性を確保することが出来るかもしれない。まぁ、色々勉強することは多いし、この方法で上手く回るかは分からない。」

 「でも、自信はある。継続性の源は、結局のところ、僕が自分をどれだけ信じられるかなんだ。」

 「僕は、E-Educationを10 年継続させて、田舎の貧しい家の出身でダッカの一流大学を卒業する同志2,000人のネットワークを作る。その頃には、彼らはそれぞれ、政府やビジネス、あるいは大学において、重要なポジションで働いているだろう。僕は、E-Educationが創りだす、人のネットワークを総動員して、社会に役立つ多彩なデジタル・コンテンツを、バングラデシュの様々な分野に提供していく。長期的にはそんなソーシャル・ビジネスを創っていきたいんだ。」

 意志の強い目を光らせながら、マヒンは語る。Crossoverのメンバーは、マヒンの確固とした意志とビジョンに基づく建設的な楽観主義、そして懸命に走りながら徹底的に考える姿勢に強く印象付けられた。そして、共に悩んだ。この素晴らしい取組みをどうしたら継続させられるだろうか?

 緑豊かなハムチャ村の田舎道を歩みながら、美しい紅に染まった夕暮れ時のメグナ川の畔で茶を飲みながら、、マヒンのお母さんの手作り料理を頬張りながら、あるいは、マヒン家のベッドに「川の字」になって添い寝をしながら、共に、語り、考えた。僕たちに出来ることは何だろうか?

  メグナ川の夕暮れ
  ~ 赤々とした夕焼けと豊かな水をたたえるメグナ川が溶け合う風景は息を呑む美しさだ ~

 答えは、既に僕たちの中にあった。それは、つながること。継続的につながっていくことだ。

 この記事を書いている今この瞬間、マヒンは東京の国立に居る。かねて念願だった一橋大学大学院への留学の機会を奨学金と共に手にしたマヒンは、Crossover Bangladesh Study Tourの丁度一ヵ月後の9月末から、日本で学んでいるのだ。期間は一年間。自らのプログラムの将来を如何に創っていくか、という等身大の問題意識を持って、一橋大学院でソーシャル・ビジネスについて学ぶ機会を得たマヒンは、きっと何かを掴み取って母国バングラデシュで待つ仲間の下に戻ってくるだろう。

 そして、CrossoverのStudy Tourのメンバーは、マヒンが日本にやってきて10日程たった週末に、国立駅に彼を迎えに行き、東京都内の見所を案内して回った。また、「日本は想像以上に何もかもが高い!」とこぼすマヒンに、服や日用品など、使えそうなものを譲るべく、友人や親戚に掛け合ってくれているメンバーもいる。そして、10月20日には、マヒン、そして共同創設者であるアツこと、税所篤快君の参加も得て、国際NGO、Oxfamの協力の下、今回のトリップの報告会もかねて、E-Educationに関する勉強会を開催することになった!こちらも動きが早い!

 勉強会の詳細は、下記Facebookの関連ページをご参照の上、ご興味とお時間のある方は、専用フォームから申込みを!
- Facebook特設ページ:
   https://www.facebook.com/events/152260818251891/
- 参加申込みフォーム(日時:2012年10月20日 14:00-16:00 @国立オリンピックセンター)
   http://www.ivgjapan.org/index.php/component/seminar/?task=3&cid=51

 ここでの出会いや議論が、新しいアイディアや動きにつながっていくかもしれない。そう、マヒンがE-Educationを通じて創り上げていく、志ある人と人との絆は、ハムチャという村の小さな校舎から始まり、大都会ダッカ、そしてバングラデシュの全国津々浦々に、さらに、国境を越えて日本までをも繋ぎ、バングラデシュ、そして日本の未来を変える原動力となっていくだろう。そんな機会を創ってくれたマヒン、そして僕らを温かく迎えてくれ、本当に多くの学びと素敵な笑顔、そして美味しいベンガル料理を惜しみなく与えてくれたマヒンのご家族、ハムチャ村の人々や子供たち、そしてE-Educationで学ぶ高校生やスタッフの皆に、心から伝えたい。

 ショバイケ・オネク・ドンノバート! (皆さん、本当に有り難う)
  アプナデール ションゲ デクテ アムラ クープ クシホエチェ!!!(出会うことが出来て僕達とても幸せでした!!)
 
  bangla trip 8
~ハムチャ村にあるマヒンの実家の玄関で。マヒンとマヒンのお母さんを囲んで~
                    (本シリーズ終わり)
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バングラデシュのソーシャル・ビジネスが織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/10/09 12:37
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