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自分は付加価値を齎すことが出来るだろうか?

     世界銀行ダッカオフィスの外観
    (職員約180名を擁する世界銀行バングラデシュ Country Officeの外観)
 
 7月31日の夜にバングラデシュに到着してから約1ヶ月が過ぎようとしている。携帯電話の入手、家探しと大家との契約交渉、銀行口座の開設、家具の買い込み、ウェブ環境や世銀のe-mail accoutのセットアップ、名刺や職員証の作成、そのほか行内手続きのためのペーパーワークなど生活とビジネスの基盤確立を亀の歩みで右往左往しながら進めてきた。

 幸い、8月は世銀グループ全体が活動のペースを最も緩やかにする一月。ワシントンの本部も含め多くの職員が休暇(しかも最短で2週間から長い人では一ヶ月!)をとっている。また、バングラデシュでは8月2日から約1ヶ月のラマダン(断食月)期間中であり、クライアントであるバングラデシュ政府職員や世銀の同僚の多くを占めるムスリムは、日の入り(18:30頃)から始まる「イフタール」と呼ばれる夕食を家族や友人ととるため、16:00過ぎには退社をし始め、17:00頃にはオフィスはひっそりとした雰囲気となってしまう。もちろん、オフィスの外は、皆がいっせいにイフタールの夕食に間に合うよう16:00過ぎに帰宅するため、いつも以上に激しさを増す交通渋滞に支配されているのだが。

 バングラデシュという国はもちろん、世銀と言う組織においても全くの新参者、右も左もわからない自分にとって、この穏やかに流れる時間はありがたくもあるが、得体の知れない生暖かいモヤの中で、物事の入り口を手探りで探しているような、もどかしい時間でもある。

 そもそも、オフィスが静かなのは8月という時期のせいだけではない。写真のような個室形式の職務環境のお陰だ。しかし、これが自分にとっては何とも慣れない。静か過ぎる!!

      静かなるオフィス

 社会人になってから10年、これまで僕は、課長以下、大勢の職員が空間を共有し、相談事があればすぐに隣の上司に尋ねることが出来、お願い事があれば、目の前の部下に何時でもお願いが出来るような、他方で、隣の同僚が電話で話す声や、ミーティングの内容、コピー機がせわしなく働いている音などに支配されている大部屋で仕事をしてきた。こうした空間で仕事をすることに慣れきっていた自分にとって、この個室の職務環境は、周りで一体何が起こっているのか、同僚がどのようなスケジュールで動いているのか、上司はどのような表情で何を考えているのか、全く分からず、自分だけが隔離されているような錯覚を覚えてしまうのだ。

 世界銀行という組織は、全世界で1万人もの職員を擁しているが、しばしば「個人商店の集まり」と表現される。教育、農業、インフラ、栄養、気候変動、水資源管理、保健・公衆衛生、エネルギー、法務、財務、投資環境整備などなど、多様な分野で博士号を有し、様々な機関を渡り歩いてきたその道の専門家がひしめく人間集団なのだ。

 世銀が融資やコンサル業務などのプロジェクトを実施する時、例えばバングラデシュでソーラー・パネルを活用したエネルギープロジェクトを展開するときには、Senior Energy Specialist(兎に角皆、何かのSpecialistなのだ)が、LeaderとしてTask Teamを形成する。Task Teamの面々は、同じくエネルギー分野の専門性を若手の職員(Energy Specialist)数名、及び、法務・財務や資材調達の専門家等6-7名で構成される。このTask Teamが、相手国政府の職員と二人三脚で、プロジェクトを回していくことになるため、グループ・ワークは求められるものの、各自が与えられたタスクを、期限内に、求められる水準のクオリティで作り上げさえすれば、そのやり方やペース、プロセスは個人の裁量に委ねれることになる。

 このことは、到着後すぐに、同じチームで働く、Country Director(世銀バングラデシュ支店の支店長)の懐刀の一人、アルゼンチン人のリザンドロから聞かされた助言にも良く現れていた。


 「Yoichiro、出勤時間は何時でも構わないし、何時に帰ってもいい。出席が必要なミーティングや打ち合わせがないのなら家で仕事をやっていたって構わない。ノート・パソコンは持ち帰り可能だし、イントラネットにも、共有フォルダーにも必要なSecurity Clearanceをやればつながるし、メールも送受信できる。ネットがつながるならジャングルで仕事していたっていいんだ。」

 「僕らのボスであるCountry Directorは大雑把な指示を出すけれど、それをどういうやり方でどのくらいのペース配分でやるかは、君が判断することだから。ちゃんと結果を出せば誰も細かく干渉したりはしない。」

 僕が、これまでの日本の職場環境について触れつつ、どうやって皆情報共有をしているのかを聞くと

 「へぇ、君はそんな環境で仕事をしてきたのか!隣の同僚の電話の声が聞こえるって!?That's impossible!!そんなところで働かされたら僕は発狂するよ。プライバシーは重要だ。必要な情報はメールで共有すればよい。あと、個別に相談したいことがあれば僕も含めて、皆、オープンだよ。忙しいときには「ちょっと後で」と言われるかもしれないけれど、相談されることについてイヤな顔をする人はいないと思うよ。」

確かに、相談すると皆快く応じてくれ、一を聞くと10くらいの内容をドット返してくれる同僚も多い。しかし、話を聞いて戻ってくるとまた静かで孤独なオフィス。逆にこれに慣れきってしまうと、将来日本の大部屋に戻ってから、先ほどの同僚のように「発狂」してしまうのではないだろうか…。不安は募るが、様々な外部環境に適応して、その場その場のやり方、環境で自分のベストを出していけるようにするために、こうしたAwayでの他流試合を望んで乗り込んできたんじゃないか、留学の時だってそうだったじゃないか、自分に言い聞かせる。



 ちなみに、専門家集団で成り立つ組織が陥りがちな問題が「Silo Problem」である。「Silo」といっても、牧場に立ってる円筒の倉庫は世銀のオフィスにはない。まるで「Silo」の中にこもって居る時のように、周りが見えなくなり、他の部門と連携をとらず、各部門が部分最適に陥っていく、つまり縦割り主義、Sectionalismを「Silo Problem」と表現するのだ。

 そして、僕がCountry Directorの補佐官の一人と加わっている、Country Management Unit(CMU)というチームのミッションこそ、このSilo Problemをなくし、世銀がバングラデシュの開発のパートナーとして、各セクターの部分最適に陥らずに効果的に支援を展開できる集団としていくことにある。具体的には、
 ・中期(4年間)の世銀のバングラデシュ支援戦略(Country Assitance Strategy)の作成、
 ・戦略に盛り込まれた目標、例えば、「バングラデシュの子供たちが中学校を卒業できる率を2006年の38%から2014年には50%にまで改善する」を実現するために、各プロジェクトが達成するべきIndicato(中間指標)の作成やモニタリングの仕組みの構築、
 ・NGO等、第三者の視点を活用した、世銀のプロジェクトの評価の実施
等が挙げられる。

 いずれも、効果的に仕込めば各セクターの担当チームがSiloを超えて、全体の視点からプロジェクトを実施していく、あるいは、business as usualでセクター毎にプロジェクトを回していたのでは見えてこない気付きを共有していく一助となり得る。一方で、仕込みに失敗すれば、単に手続きやペーパーワークだけが増え、ただでさえプロジェクトを回すのに忙しいセクターの同僚たちの負担を付加価値なく増やすだけに終わる、と言うことになりかねない。

 自分は、この専門家集団の中で、果たして付加価値を齎すことができるのだろうか??

 まずは、自分自身が、この静かなオフィスという名のSiloにこもり過ぎず、各セクターの同僚から、彼らがどのようなイシューに直面し、どのようなニーズを抱えているのかじっくりと耳を傾ける、さらには世銀以外でバングラデシュの開発に汗を流している、他の機関とのネットワークを広げる、ということが効果的な仕込みに欠かせないのではないか。

 このように意気込み、同僚たちの部屋を回るものの、多くのセクター担当者が夏休みでオフィスにおらず、あるいは、断食明けの夕食のためにさっさと帰宅してしまうのだ…

 「Yoichiro、バングラデシュで開発の仕事をやるにはPatience(忍耐)が必要だ。Patienceだよ…。まぁ9月になったら、物事が急速に回転し始めるから、今は焦らずに。」

 リザンドロが打ち合わせの最後に僕にくれたアドバイスを胸に抱きつつ、バングラデシュでの最初の一月が終わろうとしている。
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バングラデシュでの生活が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2011/08/27 18:45
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