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バングラデシュの農村に電気は届くのか?(その4)

 「ソーラー・パネルとマイクロ・クレジットの併せ技で、送電線網が届きにくいバングラデシュの農村部に電気を灯らせる」
 こんなアイディアを面的・持続的に実行に移すには、ターゲットとなる家庭の慎ましい購買力、ソーラー・パネルを販売するローカルNGOやマイクロ・クレジット機関の乏しい資本基盤、そして政府の貧弱なプロジェクト実施能力、といった幾重もの壁を、継続的に乗り越えていかなければならない。


バングラデシュにおけるソーラー・パネル販売促進に関する背景等については、下記の記事を併せてご覧下さい。
   バングラデシュの農村に電気は届くのか?(その3)
   バングラデシュの農村に電気は届くのか?(その2)
   バングラデシュの農村に電気は届くのか?(その1)


 こうした中、世界銀行がThe Infrastructure Development Company Limited(バングラデシュインフラ開発公社:IDCOL)を実施機関として2003年より展開している「Rural Electrification and Renewable Energy Development Project」 が、例外的なスピードで、バングラデシュの農村部にソーラー・ホーム・システムを設置出来ている背景には、Grameen Shakti等、現場ネットワークを持つNGOやマイクロファイナンス機関との連携に加え、Output-Based-Aid(OBA)という資金提供手法がある。

 世銀をはじめ、多くの開発機関によるプロジェクト融資は通常Input-baseで実施される。学校を建設するプロジェクトであれば、用地、セメント、ボトル、鉄骨、あるいは現場作業員の人件費など、学校という最終アウトプットを作り出すために必要なインプットの購買あるいは見積もりに応じて、資金を提供する方法が採られる。
 
 他方、Output-Based Aidの場合、資金提供のタイミングは文字通り、アウトプットに応じることになる。ソーラー・ホーム・システムの場合には、システムを販売・設置するGrameen Shakti等のローカルNGOに対して「農村部の家庭にソーラー・ホーム・システムが据え付けられ電気が灯る」というアウトプットを確認した段階で、つまり、出来高払いで、資金が提供されるのだ。

 Input-baseとOutput-baseの本質的な違いは、プロジェクトの遅れ等によるコスト増の負担を、プロジェクトの発注側(IDCOL)及びそれをファイナンスする援助機関(世銀)側(つまり、その資金を提供している先進国の納税者)ではなく、プロジェクトを実施する業者側(Grameen Shakti)が負う点にある。何故なら、事前契約で合意したコストの範囲内でソーラー・ホーム・システムを設置するというアウトプットを出さない限り、インプット購入に必要な費用が提供されないのだから。

 これは、プロジェクトのアウトプットを可能な限り早く出そうという強いインセンティブを実施機関に与えると同時に、プロジェクトの成果を発注側が極めてタイムリー且つ正確に把握する仕組みがビルト・インされるという効果をもたらす

 Grameen Shakti等の業者側もマイクロ・クレジットを組み合わせてソーラー・ホーム・システムを販売した後、アウトプットさえ示せば、その資金回収を待つ事なく次なる顧客向けのソーラー・ホーム・システム仕入れ資金をIDCOLから借り入れることが出来る。しかもその資金は世銀が提供する無利子資金。これにより低コストで資金の回転率を高めつつ、商品の販売及びマイクロ・クレジット融資を実施出来る。このサイクルが回ることで、ソーラー・ホーム・システム販売により利益を上げるというBusiness Profitabilityと、送電線網が届きにくい農村部に電力アクセスが次々と実現する、というSocial Impactが両立されるのだ。

 Solar Panal in Rural Bangladesh

 なお、業者側が最初のアウトプットを出すまでに必要な程度の当初資金を持ち、且つ、健全な経営体制を有していなければ、この仕組みはうまく機能しない。このため、ソーラー・ホーム・システムを世銀資金を活用して販売するローカルNGO等を選択する際、IDCOLは①最低100万タカの資本金を有するか、②負債額が資本金の3倍を超えていないか、③少なくとも1万人の顧客がいるか、④外部監査に基づく会計報告を毎年好評しているか、といった基準を設定し、これを業者選抜の入札参加に関する前提条件としている。


 国連の統計では、2010年現在、世界で14億人もの人々が電気無しの生活を送っている。その多くはバングラデシュの農村部やチョール(中州)に暮らす人々同様、送電線網の敷設が極めて困難な地域で暮らしている。一方、IEA(International Energy Agency)は、2030年までに全世界の人々が電力アクセスを手にするには、現在の投資額を遥かに上回る毎年360億ドル(約3兆円)の資金が必要と見積もっている。ニーズは莫大に存在し、資金はまったく不十分ということだ。ソーラー・パネルという技術革新を、それを真に必要とする人々の手に届けるには、公的資金の効率的な活用と民間資金の更なる動員が欠かせない。
  
 2003年、世銀はイギリスの援助機関DFID(Department for International Development)と連携して、Output-Based Financingのコンセプトを世界に広め、具体的なプロジェクトにOBA形式で資金を提供し、その結果得られた教訓をまとめて発信することを目的に、Global Partnership on Output-Based Aid(GPOBA)を立ち上げた。現在GPOBAは、世銀、DFIDに加え、Aus-aide(オーストラリア政府の援助実施機関)、DGIS(オランダ政府)、SIDA(スイス政府の援助実施機関)及びIFC(世銀の対民間セクター投融資部門)の参加及び資金提供を得ており、世銀はGPOBAのスキームを活用して、世界中で、地方道路整備や電力供給等のインフラ・セクター及び母子保健等のヘルス・セクターを中心に、総額約39億ドル、136のプロジェクトで、Output based Aidの手法を活用している。
 OBA World Wide
(世界で実施されているOutput-based Aidのプロジェクトについては、"OBA-DATA"で全て確認することが出来る)

 継続的な技術革新により、さらなる価格低下や性能向上が見込まれるソーラー・ホーム・システム。これが途上国の農村部も含めて広く継続的に普及していくためには、迅速なプロジェクト実施のインセンティブを実施機関に与え、購買力に乏しいエンド・ユーザーでも入手可能なレベルにまで価格を調整し、具体的な成果をタイムリーに示すことで官民双方の資金を動員できる、ファイナンシング・メカニズムが欠かせない。そして道具は既に我々の手にある。

 世界に存在する電気の無い村々の数多の家庭に、経済的、社会的、そして地球環境的に持続可能な形で明かりが灯る日は、実はそう遠くないかもしれない。(本シリーズ終わり) 
  Solar Home System
 ~ソーラー・ホーム・システムの力で灯る明かりの下で卵を炒める茶ドカン(茶屋)の若者。バングラデシュの南端、ボルグナ地区のガージョン・ブニア・バザールより~
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バングラデシュと世銀の協働が織り成す物語 | コメント:(1) | トラックバック:(0) | 2012/06/30 19:40
コメント:
なるほど!
ソーラーシステムを売り込みに来たNGOの担当者が、「世銀の支援で安く売ることが出来る」と言っていたので、「どういう仕組みなのかなぁ?」と思っていました。
v-21勉強になりました!

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