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バングラデシュの農村に電気は届くのか?(その3)

 バングラデシュでは農村部や中洲を中心に、約9,400万人もの人々が今なお電気無しの生活を送っている。一方で、その国土は大小約400の河川に分断され、雨季には約4割が水没する環境下にある。大型発電所の建設と送電線網の配置という従来型の方法では、全国津々浦々にまで電気を供給することは極めて困難だ。こうした中、
 「2020年までに電力のユニバーサル・アクセスを実現する(The Vision and Policy Statement 2002)」
 「全エネルギー供給に占める再生エネルギーの割合を現状の1%以下から2015年には5%に、2020年には10%にまで高める(The Renewable Energy Policy 2008)」」
というバングラデシュ政府が掲げる野心的な目標実現に向けた有力なツールが、数十ワット程度の発電能力を持つ小型の太陽光パネル、充電用バッテリー、電灯、その他付属品で構成される、ソーラーホームシステム(SHS:Solar Home System)だ。
 
  Solar Home System

 ただ、技術革新によって人々の生活を変革し得るプロダクツが開発されても、それを、面的且つ持続的に普及させていくには、以下のような需要面・供給面の双方にある壁を乗り越えなければならない。

 需要面については、対象となるバングラデシュ農村部で暮らす人々、即ち、概ね月収5,000~10,000タカ程度(約5,000円から10,000円)の層に手に届き、実際に購買意欲をそそるような価格と支払方法を考えなければならない。ソーラー・ホーム・システムが魅力的であり、将来の収入向上に役立つと考える人はバングラデシュの村にも少なからず存在するかもしれないが、数万タカもの金額を耳をそろえて支払うことのできる家計はごく僅かなのだから。
 
 一方で供給側が持続的且つ効率的に、ニーズに応じて次々とソーラー・ホーム・システムを提供していけるメカニズムも必要であり、その際、資金調達面とプロジェクト実施面の双方で課題がある。

 まず、上記ターゲットに対して、ソーラー・ホーム・システムを販売する場合、一括払いではなく割賦販売やローンが有効であることは容易に想像がつくが、これには供給側の資金調達が壁となる。つまり、対象となる層が支払いやすいスケジュールで割賦販売やローン販売しようとすれば、代金回収に時間がかかることから、供給側が次なる顧客向けのソーラー・ホーム・システムを仕入れるための資金を確保できるまでの間、ニーズに応じることが困難となる。ソーラー・ホーム・システムを村々に売り込み、設置するのに必要なネットワークを持つローカルな企業や草の根のNGOの資本基盤が慎ましことを考えれば、資金の回転率を高める必要性は殊更高い。もちろん、供給側が、銀行等からのローンによってまとまった資金を確保し、まとめて仕入れをする手もあろうが、これに伴い発生する金利は、ソーラー・ホーム・システムの価格に転嫁されざるを得ない。価格が高くなれば、せっかくの技術革新の成果が、それを必要とする人々の手から遠ざかってしまう。

 こうした資金調達面・価格面の問題があるからこそ、世銀から提供される無利子の融資資金を活用した政府の介入が意味を持つ。しかし、ここで更なる問題と対峙しなければならない。それは、世銀や日本をはじめとする多くの開発パートナーが揃って頭を悩ましている「政府のプロジェクトが当初予定通り前に進まない(その結果、初期の開発成果がなかなか実現されず、コストも予算を上回ってしまう)」という問題だ。

 例えば、政府が、ソーラー・ホーム・システムをまともに据え付けることが出来る業者を選び、彼らが正しい価格で必要な機材を必要な分だけ仕入れ、それを目的通り使っているかを事前・事後にスクリーニングし、モニターするためのシステム、つまりしっかりとした入札/調達プロセスをバングラデシュ政府が確立し実施するのは容易でない。また、政府のプロジェクト実施機関に、必要な能力を持った人員が十分な数いない、という話は五万とある。さらに、プロジェクト内容の微細な変更でも、関係省庁全てに合議をまわし、その上でトップレベルまで承認を取らなければならない等、万事につけ政府内の意思決定に時間がかかる。こうしてダラダラと進めているうちに、インフレによる資材コストが上昇等の影響で、当初の予算枠内で作業ができなくなる…、仕方なくプロジェクトのリストラをするが、そのためにさらに膨大な時間がかかる…

 書いているだけで頭が痛くなるこの手の話は、世銀プロジェクトのポートフォリオを見ていても、決して稀な話ではないのだ。

 バングラデシュの農村部の家庭に、広く、そして次々とソーラー・ホーム・システムを設置し、当該家庭の蛍光灯が点灯するという「アウトプット」を出す、もって、その家庭の子供たちの勉強時間が延びる、あるいは家計の所得が向上する等の、前回の記事で登場したファリダさん一家が享受しているような「アウトカム」を、面的・持続的に創出していくには、プロジェクトのデザイン、プライシング、資金調達、実施の各面で発生する様々な課題を確実且つ継続的にクリアしていかなければならないのだ。簡単な話ではない。

  Solar Home Systemの力で灯る蛍光灯
       ~ Solar Home Systemの力で灯る蛍光灯 ~
   
 ところが、ここでちょっとビックリするような話がある。

 世銀からの融資を元にソーラー・ホーム・システムの設置プロジェクトを実施しているThe Infrastructure Development Company Ltd (IDCOL)は、2003年のプロジェクト開始当初、2008年までに5万個のソーラー・ホーム・システムの敷設を目標としていたところ、目標を3年前倒しで、つまり2005年には目標を達成したのだ。しかも、当初の予算見積もりを約200万ドル下回るコストで。さらにプロジェクトの対象を拡大するフェーズ2の目標である「2012年末までに追加で100万個の設置」を早くも2011年6月には達成している。

 これは極めて例外的な成功だ。この背景にはいったい何があるのだろうか?IDCOLの職員が皆そろって例外的に有能で高潔だったのだろうか?

 むろん、IDCOLの職員の努力もあろうが、注目すべき一つのカギは、本プロジェクトが採用しているOutput-Based-Financingという資金提供手法だ(続く)。
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バングラデシュと世銀の協働が織り成す物語 | コメント:(1) | トラックバック:(0) | 2012/06/26 23:24
コメント:
はじめまして
私はTangail、Modhupurの医療施設で活動しています。
ソーラー・ホーム・システムの話、とても興味があります。

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