スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | --/--/-- --:--

バングラデシュの農村に電気は届くのか?(その2)

   Solar Home System
   
 バングラデシュの電力不足の問題については、これまでこのブログでも何度も取り上げてきたが、人口の8割近くが住む農村地帯やチョール(中州)の多くでは、送電線網の敷設が困難であることから、電力自体が届いていない。バングラデシュの電化率(国民のうち電気が使える比率)は2009年時点で41%。都市部は76%である一方で、農村地帯の電化率は僅か28%に留まっており、今なお9,400万人近いバングラデシュ人が電気のない生活を送っている。ちなみに、国民一人当たりの年間電力使用量は146.4キロワット。もちろん、バングラデシュ国内で相当程度の格差があるが、単純比較で、日本一人当たり(7,833キロワット)と比較すると、日本人はバングラデシュ人と比較して50倍以上の電力を消費している計算になる。

 人間電気がなくても生きていくことはできる。しかし、その生活は相当程度不便なものとなり、社会指標、経済指標を改善するための多くの機会を逸さざるを得なくなる。例えば、前回の記事でバングラデシュにおける携帯電話の爆発的な普及について紹介したが、家に電気が来ていなければ充電ができない。この場合、村でグリッド(送電線網)と繋がっている数少ない裕福な家庭や店にまで出向き、充電を依頼しなければならない。しかも、夏場は一日12時間以上という計画停電の合間を縫ってだ。

 また、電気代わりに使われる灯油ランプ(いわゆるランタン)は、室内の空気汚染や悪臭をもたらし、室内で多くの時間を過ごす女性や子供たちの健康に悪影響を及ぼす。一方でランタンに火をともすための灯油購入のコスト(1リットル46タカ程度)は馬鹿にならない。また、手元を明るく照らす必要のある手縫いや機械の修理等の内職は夕暮れとともに中断せざるを得ない。僅かな灯油ランプの元での出産は危険極まりないものとなるだろう。

ランタンを灯す商店
       ~ 灯油ランプ(ランタン)の僅かな灯で営業を続ける商店 ~

 電気のない生活を具体的に想像してみると、たとえ豆電球2-3個と携帯電話の充電ができるだけの、せいぜい40~120ワット程度の慎ましい電力が手に入りさえすれば、その家庭の、あるいは村の生活を激変させる効果を持つことが理解できる。問題は、送電線が敷設されるのを待っていては、人々の切実なニーズは場合によっては一世代待っても満たされないということだ。しかし、ソーラー・ホーム・システムはこの現実を変えた。 


 前回の記事で紹介したボルグナ地区の Garjon Bunia Bazaar(ガージョン・ブニア・バザール)で夫とともにお茶屋さんを営んでいるFarida Begum(ファリダ・ベガム)さんは、そんな激変を経験した一人だ。ベガムさんは、3万2千タカ(約3万2千円)でソーラー・ホーム・システムを購入。頭金として4,000タカを支払い、残りは3年のローンを組んで毎週700タカを分割払いで返済をしている。

    ファリダ・ベガムさん
 
 ファリダさんはコンデンス・ミルクと砂糖をお茶のグラスに入れ、スプーンでカチャカチャとかき混ぜながらソーラー・システム購入後の生活の変化について語ってくれた。「明かりがついたお陰で、日暮れ後も茶屋の営業を続けることができるようになり、収入が大きく増えました。でも、収入よりも大きいのは、子供たちが夜、家で勉強をできるようになったことです。娘と息子の学校の成績は目に見えてよくなりましたから。」

夜勉強をするベガムさんの子供たち
  ~ソーラー・システムで生み出された電気の元で勉強をする、ファリダさんの長女Shatiさんと弟のTowhid君~

ソーラー・システムによって、ガージョン・ブニア・バザール全体の様子も激変した。以前は人々の生活や仕事は夜明けとともに始まり、夕暮れとともに終わっていたが、今では黄昏の訪れとともに家々に明かりがともり始め、人々の会話や活動は熱を帯びる。

 たとえば、大勢で茶店に集まって、白黒テレビで映画を見たり…
    Garjon Bunia Bazarの様子③

 床屋で髪を整え、髭をそったり…
    Garjon Bunia Bazarの様子①

 あるいは、薬局で薬を処方してもらったり…
   Garjon Bunia Bazar②

 ミシンで縫い物を続けたり…
   Garjon Bunia Bazarの様子④

 小さな太陽光パネルによって、ガージョン・ブニア・バザールの夜は実に表情豊かなものとなった。 


 2002年、バングラデシュには約7,000のソーラー・パネルしか存在していかった。今日、バングラデシュの農村部の低所得者層だけで、140万の家庭がソーラー・パネルの恩恵に浴している。そしてその効果は当該家庭やコミュニティを超える。例えば、灯油やディーゼルの使用の低下による温室効果ガスの排出量減、エネルギー補助金減による財政赤字の緩和。あるいは、ソーラー・パネルの敷設やメンテナンスを提供する、いわゆる「Green Job」の創設だ。バングラデシュ政府は2021年までに電化率100%の目標を掲げており、ソーラー・パネルの敷設をその有力なツールと認知している。世界銀行も、2011年~2014年までの4年間を対象に策定した「Country Assistant Strategy」(国別援助戦略)において、GridとOff-Gridの組み合わせて90万の新たな家庭に電気を届けるプロジェクトを展開し、バングラデシュ政府の野心的目標達成を後押しししている。アクセスが困難な農村部を中心に存在する莫大なニーズを迅速に満たしていく際のポイントは、現場にアクセスのあるNGOとの連携、そして、革新的な外部資金の動員メカニズムによる、ソーラー・パネル提供主体への途切れない資金提供と利用者負担の低減の両立だ。(続く)
スポンサーサイト
バングラデシュと世銀の協働が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/06/22 16:51
コメント:

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。