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バングラデシュの経済は大丈夫なのか?(その2)

 危機的な電力不足は、バングラデシュの主力輸出産業である縫製業等のコストを劇的に引き上げ、食料安全保障を脅かし、そして人々のクオリティ・ライフを決定的に損ねている。電力危機はマクロ経済の安定にも暗い影を落としているが、マクロ経済状況に関する話題に入る前に、今日の記事では、そもそも何故電気がこないのか?というシンプルな問いと向き合いたい。

   power plant

 この問に関するストレートな答えは、「バングラデシュにおける経済活動の活発化を背景に増加を続ける電力需要に、電力供給が追いついていないから」ということに尽きるのだが、では、深刻な電力危機を前に、バングラデシュ政府はただ手をこまねいているのだろうか?

 そんなことはない。現与党アワミ・リーグが2009年に政権を取得して以来3年間で、バングラデシュの電力供給は約3,300メガワットも増え、2012年2月現在で7,448メガワットの供給能力を実現したと政府は発表している。しかし、前回の記事で紹介した通り、Bangladesh Power Development Boardの日々の需給統計を見ても、総需要約5,000メガワットに対し、供給は約800メガワットも追いついておらず、大規模な計画停電が常態化している。

 供給されるはずの電力は一体どこに消えてしまったのだろうか?

   power shortage 1

 どうも“紙の上での電力供給能力”と“実際に供給される電力量”に大きな差があるようだ。例えば、当局が発表している「電力供給能力」は、国内の発電所がそれぞれフル稼働した場合の数字を積み上げているが、多くの発電所が老朽化しており、現実の供給能力は大幅に低下している。そして、新規の発電所建設は政府の資金不足のため遅々として進んでいない

 また、アワミ・リーグ政権成立以降、多くの時間と資金を要する新規発電所建設に代わるスピーディーな電力供給アップを目指して導入された「Quick Private Rental Power Plant」は決定的な失策だったとの批判に晒されている。

 「Quick Private Rental Power Plant」政策とは、読んで字のごとく、政府が私企業(Private)の手を借りて当座の国内の電力需要を賄う政策だ。具体的には、政府が選別した企業に、小規模自家発電機(いわゆるジェネレーター)と発電に必要な燃料費を提供、そして、各企業が沸かした数十ワット程度の電気を政府が買い取っていくというものだ。

 各企業がジェネレーターを購入して電力を沸かし、それを政府が買い取れば、たとえ個々には小規模であっても、時間を掛けることなく、チリも積もって山となった電力を供給できる…これが、アワミ・リーグが政権取得時に有権者に示した電力危機脱却のための秘策だった。実際に、現在政府が発表している「3年間で3,300メガワットの新規電力供給の実現」の大半は、このPrivate Renal Power Plantによるものだ。

 しかし、電気は来ない。停電は増える。何故だろう。 

   power shortage 2

 前述の通り、当局が発表する「電力供給量」は、今ある設備がフル稼働した場合に供給させる仮想の電力量で、実際に供給される電力量とは異なる。そして、Privte Rental Power Plantが大掛かりな失策となってしまったシンプルな原因は、政府から発電に必要なジェネレーターの提供を受けた企業が、ジェネレーターをフルに稼働させていないことにある。

 これは何故か?燃料が十分でないのだろうか?いや、燃料代は政府から企業にフル稼働に必要な分だけシッカリ支払われている。では、その資金はどこに?その確たる答えを示す証拠はどこにもない。しかし、金の行く先が彼らのポケットであることは、多くメディア、専門家、そして市民が知るところだ。では、何故、当局はしっかりチェックをしないのか?それは、そもそも選ばれた企業が、政府の高官や政治家との密なパイプがあるものが多いためだ。

 それだけではない。政府が各企業から買い取る電力価格には、このスキームに企業が参加するインセンティブを高めるためのマージンも織り込まれている。即ち、このスキームに“招待”された企業は、電気を作り出す原料費を政府から調達する時、そして、作り出した電力を政府に販売する時の双方で、ガッツリと儲けることができる訳だ。そして、儲かった利益の一部は、彼らをスキームに“招待”した偉い人にキックバックされている。ストレートに書くのが憚られるストーリーだが、これがバングラデシュの現実だ。

 これは、単に「一部の人間だけが得をしてズルイ」、「電気が来なくてヒドイ」というだけの話に留まらない。

 グローバルに燃料価格が上昇基調にある中、Quick Private Rental Power Plantに必要な膨大な財政負担は、一般消費者向けの燃料や農家が購入する化学肥料の小売価格を抑えるための補助金増加と相俟って政府の財政を圧迫しているからだ。例えば、アジア開発銀行の試算では、政府歳出に占める電力・燃料・肥料関連の補助金の割合は2010年度の8.8%から2012年度には19.1%にまで上昇している。増大する費用を賄うために政府は国内銀行からの借入れを増やし、これが金利の上昇を招いている。

 つまり、電力不足で苦しむ国民や企業に電力を供給するために導入された「Private Rental Power Plant」政策は、政府高官や政治家とのつながりを持つ一部企業への補助金政策に化け、必要な電力を生むどころか、財政の圧迫と金利の上昇と言う巨大な負のコストをバングラデシュ経済にかける結果となったのだ。

 こうして、電力不足と、その背景にある政府のエネルギー政策実施能力の低さは、過去10年近くに亘り保たれてきた経済活動の基盤である、マクロ経済状況の不安定化をもたらしている。具体的には、上述した財政の悪化と高騰を続ける銀行から企業への貸付金利に加え、過去10年で初めて二ケタ台に達したインフレ率、そして国際収支の悪化と為替レートの下落だ。次回は、バングラデシュの普通の人々の生活やビジネスの基盤を脅かし、人々から経済的、心理的余裕を奪っているマクロ経済の不安定化についてまとめていく。(続く)
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バングラデシュの経済・産業が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/05/18 17:39
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