スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告 | --/--/-- --:--

バングラデシュは本当に“最貧国”なのだろうか?(その1)

   ダッカの大通りを埋め尽くすモノたちの列

 「南アジアの最貧国」という枕詞と共に語られることが多いバングラデシュ。しかし、ダッカの街中に広がる風景を前に、拍子抜けともいえる意外感とともに、こんな疑問を浮かべる訪問者は多いのではないか。
 「バングラデシュって本当に“最貧国”なのだろうか?」 

 ダッカの往来を埋め尽くす乗用車。日本車を中心にピカピカの新車も目立つ。主として富裕層が利用するスーパーに入れば、化粧品や日用品、食料品等、日本やアメリカのスーパーと殆ど変わらない品揃え。価格も日本とあまり変わらない。

   ダッカのスーパーマーケット
  ~ダッカの富裕層向けスーパー、「アゴラ」店内。先進国と変わらぬ品揃えだ~

 一般の人々が利用する地元の市場でも、丸々とした野菜や香ばしい香りを放つ果物、そして数多くの魚等、豊富な品揃えを楽しめる。立ち並ぶモダンな高層ビルの下を行きかう人々の服装も小奇麗だ。ダッカの街中のアチコチに24時間オープンの銀行ATMがあり、一日上限10万タカ(10万円)で、何時でもお金を引き出せる。他行のATMであっても概ね引き出し可能で手数料はかからない。

     ダッカ4
     ~乗用車の増加とともにダッカの渋滞は悪化の一途を辿っている~

 ダッカの中心部にそびえる「ボシュンダラ・シティ」に行けば、自分が“最貧国”にいるとはとても信じられないだろう。「南アジア最大のショッピング・モール」としてオープンした21階建ての巨大な建物は、8階までがデパートとなっており、洋服、家電、貴金属、日用品などなどを販売する約1,500店舗に日々多くの消費者が押し寄せる

     ダッカ2
    ~買い物客でにぎわう巨大ショッピングモール、ボシュンダラ・シティ~

 8階部分はフライド・チキンやピザ、ハンバーガーなど様々なファースト・フードを販売するフード・コートに映画館が併設されている。ボシュンダラ・シティの混雑は、ここで売られる薄型液晶テレビや高価な貴金属類などを買えるだけの購買力を持った消費者が相当数存在することを示している。そしてこの巨大なショッピング・モールがオープンしたのは、決して最近の出来事ではない。既に7年も前、2004年の夏の出来事なのだ。

 人々の購買力の向上を支えるのが、昨年トルコを抜き、中国に次ぐ世界第二の輸出国となったニット・ウェア商品を初めとする縫製業、販売額10億ドルを突破し近隣諸国への輸出も展開する製薬業、皮革産業、ジュート産業、利用者数が人口の3分の2近く、8、500万人を突破した携帯電話などの通信業等、各種産業の隆盛だろう。

   ダッカ1
  ~ダッカ近郊の「輸出加工区(Export Processing Zone)」内の縫製工場。縫製業は若い女性の雇用の受け皿ともなっている~

 視点を田舎に移しても「本当に最貧国なのか?」という疑問は強まるばかりだ。バングラデシュ赴任後の8ヶ月で既に30以上の村や町を訪問してきたが、どこへ行っても市場は人々の活気と豊富な物産で溢れている。そして、青々と広ががる田園風景。2011年現在で、3,300万トン、日本の4倍、世界第4位を誇る米の生産量は、異なる品種の3毛作を可能とする肥沃な大地が齎す恩恵だ

   田園風景
 ~黄金のベンガルを象徴する青々とした水田、バングラデシュの田舎の風物詩だ~
  
 様々な野菜や果物の実りも豊かで、夏場にはパイナップルやマンゴーの甘い香りが市場いっぱいに漂う。また、外から見れば「毎年の洪水で国土の半分が“水没”する、“厳しい環境”」として語られがちな毎年の雨季だが、古来より「黄金のベンガル」と呼ばれてきたバングラデシュの豊穣な大地をつくりだし、また、豊かな漁場を生み出す恵みでもあるのだ。

 「最貧国」というと、食うや食わずの人々や紛争等により故郷を追われた難民、ハイパーインフレや物資の欠乏、あるいはHIV/AIDなどの感染症の蔓延等が想像されるが、そのどれをとっても、バングラデシュには、それ程当てはまるようには見えない(無論、栄養失調は未だ大きな課題だが、飢餓人口が社会問題となっている訳ではない)。



 こうして見ると、むしろ、「何故バングラデシュは「最貧国」に分類されているのか」と疑問に感じてしまう。世界銀行は、最貧国、即ち「Low income country」を一人当たりの国民所得(GNI)が1005ドル以下の国と定義している。そして、最貧国と分類されている35カ国を見ると、ブルンジ、ニジェール、マラウイ、マリと言ったサブサハラの国々、東アジアでは、北朝鮮、カンボジア、ミャンマーが含まれており、南アジアでは、アフガン、ネパールと並んでバングラデシュが含まれている。ちなみにバングラデシュの一人当たりの国民所得は2011年現在700ドル。確かに最貧国だ…

 しかし、この数字はあくまでも一国の富を人口で単純に割ったもの。つまり人口の大きな国ほど、値は小さくなる。そして、バングラデシュは世界で8番目に大きい約1億5千万人の人口を擁する。
 
   定員オーバーの船
  ~人口過密国バングラデシュを象徴するような明らかに定員オーバーの船。どこへ行っても人・人・人。。。沈まないことを祈るばかりだが、乗っている人々は笑顔で手を振ってくる。~

 最近、「中国が世界第二の経済大国になった」といわれるが、この指標、つまり国全体の経済力を示すGDPでバングラデシュを見ると、1,150億ドル(約11兆円)でベトナムに次ぐ53位、さらに物価の違いを加味した購買力平価ベースで見ると2,825億ドルで、世界で189か国中、44番目の経済力を持つことになる。

 多くの人々が持つ「バングラデシュ=最貧国」というイメージは、数ある経済・社会統計の一つに過ぎない「一人当たりの国民所得(GNI)」という指標を一人歩きさせた結果ではないか。日本でバングラデシュといえば、「貧困」「災害」そして「貧困層を助けるグラミン・バンク等のソーシャル・ビジネス」が三大イメージであろうが、これらは「バングラデシュの今」やその可能性・課題を正確に反映しているイメージとはいい難い。

 バングラデシュはもはや「最貧国」ではなく、世界で上から4分の1の経済力を持つ新・新興国である。そして、直面している課題は、飢餓や感染症、極度の貧困といったものではなく、拡大する経済活動に見合うエネルギー、水そしてインフラの確保、無秩序に進む都市化と環境汚染への対応、そして格差の拡大といった、新興国に共通するテーマなのだ。

 と、ここまで書いてきて、ふと本ブログの副題を見ると「可能性と挑戦に満ちた南アジアの最貧国バングラデシュ」となっているではないか…(汗)。いけない、「新・新興国バングラデシュ」に変更することにしよう。
スポンサーサイト
バングラデシュの経済・産業が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/04/05 22:35
コメント:

管理者のみに表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。