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開発プロジェクトの成果向上のためには何が必要だろうか?(その3)

 バングラデシュ南西部の小さな町、バゲルハット(Bagarhat)は、ユネスコの世界遺産にも登録されている15世紀に建てられたモスジット(モスク)郡で有名だ。しかし、その巨体をデコボコ道で揺らしながら走る世銀のジープは観光名所をあっさり通り過ぎ、さらに南へと向かう。
       Bangladesh_Bagerhat

 フェリーを使って河を超え、50キロ程さらに南に進んだ先にあるMorrelgonji(モレルゴンジ)が、世銀第三者評価プロジェクトの実施現場だ。今回対象となるプロジェクトは多目的サイクロン・シェルター。普段は小学校として活用され、いざサイクロンが襲来した時には、村人及び家畜の避難所となる。以下では、前々回の記事で紹介した「Social Mapping」が、サイクロン・シェルタープロジェクトではどのように活用されるかを見ていきたい。
      Social Mapping - Shelter 1

 こちらが世銀のプロジェクトで1995年9月に建設されたサイクロン・シェルター。以前の記事「バングラデシュは変わりゆく気候に適応できるだろうか?」でも紹介したが、村の家々は土を壁に、木々を柱に、そしてトタンを屋根として活用している質素なもの。こうした家々は、サイクロンがもたらす強風や洪水を前にはひとたまりもない。また平地ばかりのバングラデシュの南部に、避難できる高台はない。村で唯一の鉄筋コンクリート2階建ての建物、サイクロン・シェルターを除いては。

 今回の第三者評価プロジェクトでは、気候変動の最前線で生きる人々の生命線であるサイクロン・シェルターがその役割をしっかり果たしているか、改善が必要であるとすれば、それは何かを、実際にそれを使う人々の声に耳を傾けながら把握していく
      Social Mapping - Shelter 2

 前々回の記事で紹介したNarsingdiの地方道整備プロジェクトへのSocial Mapping同様、実施部隊となるNGO、Bangladesh Disatster Preparedness Center(BDPC)の声掛けで集まってきた村人たちは、車座になって地図を地面に描き始める。サイクロン・シェルターを中心に、近くにある小川や橋、そして道が描かれていく。舗装されている道は緑色、舗装されていない道は茶色。養鶏場や牛が多く集まる場所も記されていく。ちなみに牛やニワトリは農家にとっては極めて重要且つ高価な資産だ。牛は一頭、中くらいのものでも3万タカ(約3万円)、大型の水牛となると10万を超えるものもある。これらは農作業の担い手とあり、また所得の糧であるミルクを生み出す。サイクロンから命からがら逃れても、家畜が皆流されてしまったのでは、その経済的な損失は計り知れず、またサイクロンが去った後の生計も立てようがない。このため、サイクロンシェルターは一階部分は家畜用に、そして2階の学校の教室、及び3階の屋上が人々が当座を凌ぐスペースとなるのだ。ちなみに、このシェルターの収容可能人数は250名程度だ。
     Social Mapping - Shelter 3

何も無かったフロアにはカラフルな地図が出来上がり、議論の準備が整った。BDPCの職員は、ごく普通の近所の農家や主婦、そして子供たちを集めて議論を始める。超大型サイクロン・シドールが2007年11月にこの村を襲った時、このシェルターは実際にどのように使われたのだろうか。

 「そもそも、シェルターの数が足りない。この村の人口約5,000人に対して、シェルターはたった一つ。もっと作って欲しい。」
 「私たち一家はサイクロン・シェルターを使えなかった。この地図の通り、私たちの家からこのサイクロンへと向かう道は舗装をされていないから、風雨の中でたどり着けなかったんだ。」
 「サイクロンが村を襲った後、このシェルターでは300人近い人が9日間過ごしたが、一番困ったのがトイレだ。何せ用意されていたトイレは屋外の少し離れたところにあったのだから。洪水で一面水浸しで、見えているのはトイレの屋根だけ。どうやって用を足せって言うんだ?
 「シドールの後、世銀のプロジェクトでこのシェルターが修復されたとき、しっかりシェルターの2階にトイレを作ってくれたのは良かった。でも水道が機能していない。乾季になるとポンプが水源にまで届かないんだ。」

 実際にシェルターを利用した人、あるいは利用したくても出来なかった人にしか分からない意見が次々と出される。議論のまとめ役であるNGO,BDPCの職員は議論や地図の内容を丹念にメモに採り、政府や世銀への報告書の題材としていく。
 そして、人々の議論は、政府や世銀への単なる要望を超えていく。
 
 「俺はこのシェルターを使わなかった。そもそも避難する必要は無いって思ったからね。モスクのマイクから「レベル8のサイクロンが来る」って流れてきたけど、何のことかさっぱりだった。近所にレンガ造りの家があったから何とか助かったけれど、そうでなければ、ダメだっただろうな。」
 「私も、サイクロンのレベルって、何のことか分からない。誰か知っている人は?」
 
 すると、以前、BDPC(Bangladesh Disaster Preparedness Center)主催の防災セミナーに参加したと言う女性が立ち上がって、サイクロンのレベルについて、自分が習ったことを村の人々に伝えていく。また、彼女は、シェルターでは男女が別々な教室に別れて避難することになるので、女性もためらうことなく避難をすべき、と説く。この地域は特に保守的なイスラム教徒が多いことから、女性が家の外に出ることへの抵抗感は強い。それを踏まえた女性からの意見は、村人たちのシェルターへの心理的な距離を縮めていく。Social Mappingの議論を通じて、村人自身がお互いの知識や経験を共有し合い、問題解決の主体となっていく。


 シーンをNarsindhiの地方道プロジェクトに戻そう。第三者評価プロジェクトのもう一つのツールであるCitizen Report Cardを使ったヒアリングが村で行われている。
      Citizen Report Card ①

 Citizen Report Cardは家計調査に似たツールだ。一定の地域からランダムに選択したサンプルに対して、あらかじめ用意した質問表を元にアンケート調査を実施する。バイアスの係らないサンプリングの方法や効果的な質問表の作り方、質問方法については、第三者評価を実施するNGOの取りまとめ役であるManusher Jonno Foundationが世銀と協働で実施したトレーニング・プログラムの場で共有される。 

 調査対象となる地方道を日々使ってる主婦、リキシャ引き、そして農家等を対象に、各々の家族の状況や収入などから始まり、家から道路までの距離、道路の主な用途、道路整備前と後を比較して、学校・病院・市場等への時間がどの程度短縮されたか、そして、道路整備に当たって私有地を提供したか、その場合は政府から所定の補償金を受け取っているか等がヒアリングされ、その結果が調査票にまとめられていく。
     Citizen Report Card②

 現在は手書きによる作業だが、これが例えば専用のアプリケーション・ソフトが搭載された携帯電話等を使って実施されれば、モニタリングの頻度や正確性、そして迅速性も格段に向上するだろう(続く)。 
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バングラデシュと世銀の協働が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/03/07 23:56
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