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バングラデシュのマラソン大会って、どんなものだろう!?(その2)

      ディナジプールマラソン、スタート地点の河

 バングラデシュの冬の朝は美しい。立ち込める濃い霧と薄い朝日が解け合い、遠くに見える木々や川の流れを幻想的に映し出す。そして空気はキリっと引き締まっている。そんな幻想的な空気を、ディナジプール・マラソンに参加したランナーたちが一斉に破っていく。先頭集団はかなりのスピードだ。気がはやるが自分のペースを守らないと後がきつい。ハーフもフルも勝負は後半からだ。一キロ5分弱程度のスピードで淡々と行くことにしよう。

     ディナジプールマラソン

 それにしても、思った以上にちゃんとしたマラソン大会じゃないか。沿道には村の人々が、この奇妙な行事の趣旨は良く分からん、という顔をしながら、次々と走り抜けていくランナーたちを見つめる。子供たちは大喜びで手を振ってくれる。路上で朝の二度寝をむさぼっていた野良犬やヤギたちが、飛び起きて道をあける。

 周りに目をやると、そこには広々とした美しい田園風景が広がっている。濃い朝霧の化粧をした丸い太陽がオレンジ色の優しい光を大地に投げかけながら、少しずつ中空を目指して上っていく姿が見える。なんて素晴らしい風景だろう!僕の体の隅々まで流れる血液や、全身の細胞たちの喜びが聞こえくる。

    ディナジプールマラソンの風景
   
 ときたま、幹線道路を爆走するバスがランナーたちを凄いスピードで追い抜いていく。バスが響き渡らせる盛大なクラクションは、まるでランナーを応援するブラスバンドのトランペットのようだ。これから市内の工事現場に向かうと思しきトラックの荷台に乗り込んだ、大勢の土方の兄さんたちが、大騒ぎで応援しながら、最高の笑顔をくれる。

 乾燥した空気に段々とのどが渇いてくる。すると、併走してくれているバイクにまたがったスタッフが、ペットボトルを手渡してくれる。水を喉から流し込み、頭からかぶる。ペースが戻ってくる。素晴らしい!何だか駅伝の選手になったみたいだ!

 いざという時のためだろうか、救急車も動員されており、ランナーと併走してくれている。沿道の応援といい、風景の美しさといい、併走バイクによる給水といい、ひょっとしたらこれまで参加してきたマラソン大会の中で、最も素晴らしい大会に今僕は参加しているんじゃ、ないだろうか!

 こんな風に本気で思わせてくれるマラソン大会だった。前半までは…

 しかし、10キロを過ぎた辺りから少しずつおかしなことが起こり始めた。

 最初の異変は米の山だ。

   ディナジプールマラソンの風景②

 近くの田んぼで収穫されたお米の取引所のような市場と遭遇。収穫した米を詰め込んだジュートの袋が路上に山積みされ、人と車でごった返している。そして、次第に台数を増していた大型バスがそこにつっかえている。僕もそこで一緒につっかえる。おいおい、こっちはマラソンレース中なんだよ。道を開けてくれないかな、と心で叫んでも、返事として返ってくるのはバスのお尻から吹き出される排気ガスだけ。折角のペースや気分も台無しだ。

 バスとトラックの隙間を潜り抜け、ようやく米市場を脱出。大分先頭集団と差がついてしまったかな…と思っていたところ、次なる異変が発生。

 確かずいぶん前に僕を追い抜き快調なペースで走っていたベンガル人ランナー数人が、爽やかな顔で手を振りながら僕に近付いてきたのだ。バイクに乗って…!?

 どういうことだろう。見間違えかな?でも、ゼッケンをしているのだから間違えない。ふと見ると、別なランナーたちが道端で談笑している。あれれ?もう走り終わったのかしら。まさか!?まだスタートして1時間数分しか経っていない。これでゴールした上で、ここまで戻ってこれているとしたら、オリンピック・クラスだ。しかし、リタイアにしては、彼らの表情、余りにもすがすがしすぎる。うーむ。理解不可能。ひょっとしたら、賞金が取れないことが明らかになった段階で、爽やか、速やかにリタイアしたということだろうか!?

 そして、15キロ地点を越えた当たり、ディナジプールの市街地に入ってくると、先程まではランナーに併走し、ペットボトルの水を渡してくれていたバイク軍団も完全に姿を消した。街の中はマラソン・レースなんて開催されていない様な感じだ。増える交通量。舞い上がる粉塵。とてもマラソン・コースとは思えない。

 乾燥した空気と粉塵で喉がカラカラに渇いてくる。最近長距離を走ってこなかった我が両足はいよいよ熱を帯び、重みを増している。水が欲しい。水!しかし、どこにも給水所がない。このままではますますペースが落ちてしまう。いつかきっと、給水所が来るだろう。ペットボトルを手にしたバイク野郎が登場してくれるだろう…

 願いはむなしく5分、10分と時間が経過していく。フラフラしてきた。これはいけない。最終手段に出ることにしよう。ポケットに手をねじ込み、汗と水でくしゃくしゃになっている10タカ紙幣を取り出し、道端のドカン(小店)に駆け込んで叫ぶ。

パニ・デベン!」(水ください!)

 ドカンの店主が僕を見て、足元のポットを面倒くさそうに取り出しコップに水を注ぐ。水は素晴らしく濁っている・・・マラソン大会に出た挙句、下痢になったのではたまったものではない!

ナー!チョト・パニ・ボトル・キンテチャイ!!タラタリ・デベン!(違う、小さい水のペットボトル買いたいの!早くくれ!!」

 店主は重い腰をあげて店の奥から水のペットボトルを取り出し僕に渡してくれる。ボトルを引っつかみ、10タカ紙幣をおいて、再び喧騒と粉塵にまみれたディナジプールの街に走り出る。もう前にも後ろにもランナーの姿は見られない。皆どこに行ってしまったんだろう。ひょっとしたら道を間違えたのかも…

 前半までの美しい風景と高揚する気持ちはどこへやら、すっかり落ち武者モードだ。あぁ、また交差点だ。どっちに行けばいいのだろう。これはタイムどころではない。

 と、赤旗を持っている男性が見える。マラソン・レースの腕章をしている!迷えるランナーをゴールに向けて誘導してくれているのだあぁ、よかった。ディナジプール・マラソン、未だ続いていたんだ。僕は一人ではなかった。

 その後、もう一度ドカンに駆け込んで水を入手し、また時折現れる赤旗スタッフに導かれながら、ようやくディナジプール駅の線路を越えた。もう少しだ。ラストスパートをかける。赤いゴールテープが僕に近付いてくる。最後の直線では大勢の市民が沿道で手を振ってくれている。

 ゴール。。。

 時計に目をやると、スタートから1時間37分が経過している。自己ベストに近いタイム。でも、きっと21キロよりも短かったのではないか。米市場に道を阻まれ、ドカンで道草を強いられ、何より最近長距離を走って来ていない自分が出せるタイムとは思えない。兎に角ゴールした。僕の前には5人くらいのベンガル人ランナーがゴールしていた。一位はなんと1時間19分!?相当のタイムだ。ベンガル人にも走り屋がいるのだ、ということを知れただけでもよかった。

 続いてポツポツと日本人の仲間がゴールしてくる。みんな、それぞれのペースでの完走。色々あったがゴールまでたどり着けてよかった。今までで最高のマラソン大会であったとは言い難いけれど、一番印象的な大会であったのは間違えない。声を掛けたディナジプールの協力隊の皆さん、一緒に走ってくれたランナーのみんな、大会を作ってくれたスタッフの皆さん、そして沿道で声を掛けてくれたディナジプールの皆さん、本当にありがとう!!

          見事完走した日本人の友人たちと
    ~ 日本人トップ3でゴールした友人たちと、みんな最高の走りでした!~
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バングラデシュでの生活が織り成す物語 | コメント:(2) | トラックバック:(0) | 2012/01/25 04:50
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