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バングラデシュの混乱と政情不安はどこまで深まるのだろうか?(その2)

 政情不安、治安の悪化が続くバングラデシュ。多くのバングラデシュ人から冷静さを失わせ、暴力の連鎖を生み出し、国家を分断させているイシューとはなんだろうか?以下3回の記事に分けて、「票」、「正義」、そして「アイデンティティ」の3点をキーワードに議論していきたいと思う

 バングラデシュの昨今の政情・治安状況については前回の記事をご覧下さい。
  『バングラデシュの混乱と政情不安はどこまで深まるのだろうか?(その1)

1.「票」をめぐる 分断
 
 バングラデシュは本年末に総選挙を控えている。

 選挙に向けて、競合する政党が、互いを否定しあう“ネガティブ・キャンペーン”を展開し、選挙妨害、選挙結果の操作、そして暴動といった様々な問題を生み出してしまうのは、多くの途上国に共通する現象だ。特に、主要競合政党が、国を構成する別々の民族をそれぞれの支持母体としている場合、選挙をめぐって大規模な暴力が発生しやすい。2007年末の選挙に端を発するケニアの危機はその好例だろう。

   バングラデシュについては、1991年の民主化以降、アワミ・リーグBNP(Bangladesh Nationalist Party:バングラデシュ人民主義党)という2大政党を中心とする連立政権が各5年の任期を全うしながら、BNP→アワミ→BNP→アワミの順で選挙のたびに政権交代を経つつ、今日に至っている。選挙結果を踏まえて権力者が交代してきたこと、そしてその時々の政権与党が5年間の任期をしっかり全うしてきたという点で、バングラデシュは優等生と言えるだろう。また、人口の99%がベンガル語を話すベンガル人、9割近くがイスラムを信奉しているバングラデシュでは、上記2大政党が異なる民族や宗教を代表している訳ではない。したがって、選挙において民族や宗教の違いが、対立軸として表面化することはない。

 しかし、来る総選挙に関しては一つ厄介な問題が燻っている。それが、選挙を実施する方法、つまり「政権与党ではなく、中立的な選挙管理内閣(Care-taker governent)の下での総選挙実施を求める憲法の規定を復活させるべきか否か」であることは、年末にアップした記事「政情不安はなぜ繰り返されるのか」で詳しく紹介したところだ。また、アワミ・リーグの党首である現首相シェイク・ハシナと、BNPの党首カレダ・ジアという二人の女性は、それぞれ相手のことを「自分の父親と家族を殺した」、あるいは「自分の夫を暗殺した」と思い込んでいる仲であり、こうした個人的憎しみが必要以上に両党間の感情的対立を増幅させ、その結果、多くの不幸を、そして時に喜劇としか言えないような珍事をこの国にもたらしてきたことについては、「8月15日は喪に服すべきか、国民総出でお祝いすべきか?」の記事を参照頂きたい。  
                 Bangladesh Politics           

  ~左側が現政権与党のリーダー。上は建国の父であり初代大統領であるシェイク・ムジブル・ラーマン。現首相のシェイク・ハシナ(左下)はムジブル・ラーマンの娘だ。一方、野党第一党のBNPの党首であり前首相のカレダ・ベグム・ジア(写真右下)は、ムジブル・ラーマンの暗殺後に就任した二代目大統領ジアウル・ラーマン氏(写真右上)の妻だ。~


 最近ほぼ毎日発生しているホルタル(暴力行為を伴うデモ)のうち、野党BNP主導で実施されるものについては、基本的に「選挙管理内閣の復活」「“専制的な政府による弾圧”で逮捕されているBNP幹部の釈放(実際は、ホルタルの際に器物損壊等を主導した罪で逮捕されている)」を名目に実施されているものだ。

 他方、現与党のアワミ・リーグは、その影響下にあるメディアなども活用して、ホルタルを連発する野党BNPを随分と非難しているが、何を隠そう、彼らが野党だった2001年から2006年までの5年間に、アワミ・リーグは計173日もの全国規模のホルタルを実施した堂々たる実績があるのだ。要するに、野党は国会での論戦ではなく、ホルタルという議場外での示威行為でもってその存在感を示し、政府・与党の失策を追及するのがバングラデシュでは常態化していると言える。

 また、ホルタルというと、バスや車に火がつけられたり、大勢の暴徒が警官隊に対してレンガや「カクテル爆弾」と言われる手製爆弾を投げつけている衝撃的なシーンがメディアに映し出されるが、これも少し冷静に見たほうが良い。 と言うのは、ホルタルで暴れている多くの暴徒は、双方の政党が追求するアジェンダに心酔しているハード・コアな支持者という訳では決してなく、「一日ホルタルに参加したら100タカ(約100円)」「カクテル爆弾を見事爆発させたら2,000タカ」という政党からの「求人広告」に応じて動員された、暇をもてあまし不満を抱える若者たちだからだ。彼らの多くは「選挙管理内閣の復活」や「政権交代」に青春をかけている訳では必ずしもなく、単に、バイト感覚で憂さ晴らしが出来る、ということで、ホルタルに参加している訳だ。
 
 この点、ホルタル期間中に、バスや列車が襲われているテレビの中継や新聞報道などを注意深く見ると、石やレンガなどをバスに投げつけ、乗客や運転手が急いで逃げ降りた後に、カクテル爆弾を投げつけて火をつけていること、列車の爆破に関しても、乗客が降りたことを見計らって火を放っているケースが多いことに気付かされる。
   
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   ~ホルタル時にダッカ市内で火を放たれ炎上するバス(写真出展:Daily Star)~ 

 もちろん、こうした行為は危険極まりないし、暴動を止めに入る治安維持部隊との衝突などにより死者や多くのけが人が実際に出ているので、絶対に興味本位で近づいたりすべきではない。しかし、アフガニスタンやパキスタン、あるいはイラクなどで発生している、「人を殺すことを当然の想定とする自爆テロ」と、バングラデシュのホルタルとは、まったく質が異なるものであることは確かだ。少なくとも、アワミ・リーグやBNPの多くの支持者や、彼らが実施するホルタルに参加している若者は、全身全霊をなげうって政治活動に関わっている訳ではないのだから。

 こうしてみると、二大政党間の「票」をめぐる分断と、その結果として発生するホルタルは、確かに危険で、多大な経済的損失をもたらすものだが、バングラデシュでは「毎度おなじみの」、「選挙が終われば落ち着く」、そして「寄せ集めの若者が暴れている」、打ち上げ花火のようなものと言える。

 ホルタルに慣れていない外国人は街中でバスが炎上しているのを見ればギョッとするかもしれないが、一般のバングラデシュ人は、ホルタルが起こっても、リスクを巧みに避けながら淡々と日々の仕事や生活に勤しんでいる(もちろん、多少の不便は感じているだろうが)。

    こうしたことから、仮に、今年2月以降発生している一連の騒動やホルタルが2大政党間の選挙に向けた権力闘争という、従来と変わらないものであれば、こんなにも連続してホルタルが起こることもなければ、外国人居住区で爆弾が炸裂することもなければ、一ヶ月で100人以上の人が死ぬこともないだろうし、誰も「独立以来最大の試練」なんて、大げさなことは言わないだろう。

 では、何故今回は違うのか。それは、今バングラデシュで表面化しているのが「票をめぐる争い」だけでなく、これを超える、極めて感情的で根深い「正義」「アイデンティティ」というイシューが絡む分断
だからだ。 (続く)
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バングラデシュでの生活が織り成す物語 | コメント:(6) | トラックバック:(0) | 2013/04/16 12:16
コメント:
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勉強になります。
今回初めてブログを拝見させて頂きました。
大変勉強になります。
私はバングラ在住2年になりますが、バングラ政治情勢などは、弊社スタッフからの口頭による情報しか入らず、どうしても断片的になってしまいがちです。
今回拝見させて頂き、点と点が線で繋がったように感じます。
これだけの情報を文章にまとめる作業は非常に大変とは思いますが、今後楽しみにさせて頂きます。
持田
No title
初めまして。
私は日本に永住するバングラ人と協業して精米工場のプロジェクトを立ち上げました。
昨年4月に彼の実家がある北部ニルファマリまで土地の視察にいきました。
その後ホルタルが次第に悪化し、ショナリ銀行のホールマーク事件など悪循環に至っております。
政権交代が噂され情勢も不安定のようですが、出資金が止まったままになって困っております。
輸出関連や金融機関は止まったままになっているのでしょうか?
何か情報をお持ちでしたらお知らせ頂けますでしょうか?
佐田
コメントありがとうございます。
持田成彦さんへ
 ブログを訪問頂き、激励のコメントを有難うございます。お互い安全面には留意しつつ、引き続きバングラの今を楽しみながら貢献を続けていきたいものですね。これからもよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
佐田さんへ
 コメント、ご質問頂き有難うございます。記事に書きましたとおり、年末の選挙に向けてホルタルや暴動が多発していますが、金融機関が止まっているという話は聞いたことがありません。ホルタルの日でも政府や銀行は空いています。また国営ショナリ銀行の不正融資事件は、民間銀行のオペレーションには直接の関係はない話です。当地の情勢は不安定ですが、24時間、365日荒れている訳では決してないので、お時間があるときに訪問され、パートナーの方と直接会って、事実関係を確認されることを勧めます。
ありがとございます
池田様
貴重な情報をありがとうございました。
早速、知人に確認いたします。
また情報効果させた頂けましたら幸いでございます。
現地でのご活躍、期待しております。

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