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バングラデシュの経済は大丈夫なのか?(その1)

 縫製業を中心とする輸出とGDPの10%にも及ぶ海外出稼ぎ労働者からの送金等をエンジンに、過去10年、平均6%の経済成長を実現してきたバングラデシュはもはや最貧国とは言えず、経済規模で世界で上位4分の1に食い込もうとする新・新興国だ。

   バングラデシュ輸出セクターの伸び
   ~2006年第一四半期と比較して、バングラデシュの主力輸出品である衣類(Garment)は2.6倍の伸び、それ以外も2倍近くの伸びを示している~

 また、国民のアイデンティティの中核を形作るベンガル語による密なコミュニケーション、「黄金のベンガル」と呼ばれてきた豊穣な大地がもたらす農作物や大河が恵む川の幸は、国民国家としての強い基盤を作っている。

 こうした中、バングラデシュのMuhith財務大臣は「このままの成長が続けば2050年までに、バングラデシュは世界でトップ15の先進国への一つとなるだろう」と鼻息が荒い。

 しかし、過去の成功物語は、この国が今後もこれまで通りの発展をしていくことを保障するものではない。むしろ、バングラデシュ独立40周年を迎えている昨年来、バングラデシュの経済・社会は大きな曲がり角に直面しつつあるのではないか…各種経済指標を横目に、日々の新聞をにぎわせるニュースや、ダッカ市内の様子を観察していると、こうした懸念が日に日に強まっていく。

    ダッカの風景
          ~市内の高層ビルの23階から臨むダッカの風景 ~

 高まる懸念の背景にあるのは、経済活動の基盤となるエネルギーの圧倒的不足、マクロ経済の安定の揺らぎ、そして、こうした課題を解決できる唯一の主体である政府の貧弱な政策実施能力及び税金徴収能力だ
 
 バングラデシュの電力や道路等のインフラの未整備については、「1キロ10分」と言われる、ダッカの凄まじい交通渋滞頻発する計画停電等を例に、既にこのブログでも何度も触れてきたが、他国との比較の視点を持つと、この問題のスケールがより鮮明に浮かび上がる。

 以下の表は、OECD-World Economic Forumが年に一度公表している「世界競争力ランキング(World Competitiveness Report)」の指標のひとつであるインフラ整備について、バングラデシュ及びその近隣の途上国の状況を比較したものだ。最低評点は1=「極端に未整備(Extremely Underdeveloped)」、最高は7「国際的に見ても広範且つ効率的」までの7段階で評価されている。
 
 quality of infrastructure

 ご覧の通り、バングラデシュは対象142か国中、下から13番目の129位。中国はスリランカはもちろん、「インフラ未整備が成長のボトルネック」と指摘されているインドやパキスタンにも大きく水を開けられている。この中でも特に足を引っ張っているのが電力(1.6)だ。

 この国全体の電力需要・供給の状況については、Bangladesh Power Development Boardのウェブサイトで更新される日次のデータで確認できる。例えば、4月17日の電力総供給は4,202メガワット、総需要は4,909メガワットと出ている。こんな調子で、年間を通じて供給が需要を上回る日はまず無いといってよく、総需要が約5,500メガワットにまで達する夏場はさらに計画停電が増えることになる。そして、需要は毎年伸びていく一方で、供給の伸びは覚束ない。
 
 そして、今やバングラデシュの電力不足はもはや「電力危機」と言うべきフェーズに突入していると言って良い。2010年8月からダッカの新築マンションやオフィスビルへの電力供給停止が実施されていることはこのブログでも既に触れたが、これに加え、今年3月からはバングラデシュ全土の産業部門への電力供給が夕方6:00から朝6:00まで一日12時間停止されている。政府との契約により24時間中断なしの電力供給を約束されていた輸出加工区(Export Processing Zone)でさえ、上記措置に伴う停電が一日数時間に亘り発生し、輸出製品の出荷に深刻な影響が出ている。多くの工場や企業はジェネレーター(自家発電装置)を備えているとは言え、これを途切れなく稼働させるための燃料費や修理費は大きな負担だ。(4月12日付けFinancial Express紙;Power Disruption in EPZs put investors in great trouble

 バングラデシュ衣料製造・輸出業者組合(Bangladesh Garment Manufacturer and Expor Industry Assocation)によれば、頻発する停電による製造の遅れが発生する中、海外バイヤーへの納期を何とか守るため、多くの企業が、船ではなく、航空機での輸出を余儀なくされている。その結果、業界の平均輸送コストが一製品当たり30セントから3.75ドルへと13倍に跳ね上がっているという(4月7日付け Financial Express紙:Power outage hampers apparel sector)。

  ダッカ市内の様子2
~ ダッカ市内に無秩序に張り巡らされる電線。しかし、電線を流れる電気の供給はなんとも心もとない ~

 そして、「産業部門への電力供給の1日12時間停止」という、経済活動を窒息死させるような施策を政府が講じざるを得なかった背景には、「食糧危機の回避」という深刻な事情がある。即ち、現在、今後収穫期を迎えるボロ米の生産に必要な灌漑用電力の不足により、好天にも関わらず国全体が食糧危機に陥る可能性が現実味を増したことから、産業部門に回す電力を農村に回さざるを得なくなっているのだ。  

 バングラデシュは、縫製業を中心にその安価で豊富な労働力から「China+1」、「(BRICに続く)Next11」として、近年日本を含め諸外国からの注目を集めているが、電力不足による生産コスト・物流コストの増は、賃金水準の競争力を相殺して余りあるほどの負のインパクトをこの国の製造業に与え、その状況は年々悪化の一途を辿っている

 そして、今は未だ4月。これからがバングラデシュの本格的な酷暑の始まりであることを考えると、事は余りに重大だ。今年に入ってさらに深刻さを増した電力危機は未だ序章に過ぎない、ということなのだのだから。そして、電力危機とその背景にあるエネルギー不足は、この国が過去10年間保ってきたマクロ経済の安定にも暗い影を落としつつあるのだ(続く)。
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バングラデシュの経済・産業が織り成す物語 | コメント:(1) | トラックバック:(0) | 2012/04/18 14:45

バングラデシュは本当に“最貧国”なのだろうか?(その2)

 国の豊かさや人々の幸福感を計る物差しは単一ではあり得ない。数字で表し難いものも多くあろう。しかし、人と人とのコミュニケーションの量は、家族であれ、会社であれ、あるいは国であれ、ある人間集団の豊かさや幸福感を考えるうえで、欠くことのできない要素では無いだろうか

 人々がその経験から感じている通り、コミュニケーションは情報共有や、相互理解を生み、協働の基礎となる信頼感や一体感を創り出す。あるいは、人間集団が直面する様々な危機を乗り越えるResilience(耐久力)を高めていく。

 この点、世界でいわゆる「最貧国」と分類される国々の多くに見られる共通項の一つが、内戦や紛争等によって、国民同士の信頼感が失われていることだ。宗教や部族の違い等に端を発する紛争により国民同士のわけ隔てない、密なコミュニケーションが困難となってしまったこうした国々では、ビジネス展開は困難であり、開発プロジェクトの成果も出にくい。

 この視点で見ると、バングラデシュは、「最貧国」に分類されながら、驚く程コミュニケーションが豊かな国だ。コミュニケーションの豊かさを図る指標が世の中に存在するのかは知らないが、少なくとも世界で5本の指には入るのではないだろうか。何しろ、世界一の人口過密国。どこに行っても人ばかり…兎に角人と人との距離が近い。

  人口過密国バングラデシュ2

  物質的なアミューズメントも限られ、イスラム国家ゆえにお酒も手に入り難い状況の中、人々の娯楽は専らお茶をすすりながらの「おしゃべり」だ。

 こうした物理的な状況に加え、コミュニケーションの密度を高めるうえで大きく貢献しているのがベンガル語だ。バングラデシュは、東部山岳地方の少数民族を除けば、人口のほぼ全てがベンガル語を母語とするベンガル人。パキスタンからの独立のきっかけとなり、動力となったのも、パキスタンによるウルドゥー語公用語化の動きへの強い反発と、母語ベンガル語を守ろうという意思だった。

 同一言語での密なコミュニケーションは宗教の違いも乗り越える。バングラデシュは国民の9割近くがムスリムであるが、キリスト教徒やヒンドゥー教徒も社会で認知され、受け入れられ、尊重されている。

 例えばこんなエピソード。

 ラッシャヒという地方都市の近くにあるプティヤは、立派なヒンドゥー寺院群で知られる観光名所。ここを訪問した僕に、寺院の中や一つ一つの背景にある宗教的意味をブロークン・イングリッシュで説明してくれたガイドは、ムスリムだった。

 「いや、まぁ仕事だから。でも、そこいらのヒンドゥー教徒より、ヒンドゥーの教えについて詳しい自信はあるけどね。」

 はにかんだ笑顔が印象的なヒゲ面のオヤジは、訪問客である僕を自宅に招き入れ、「今食べたばかりだから」と必死で遠慮する僕に、大量の昼ごはんを振舞ってくれた。
 
 あるいは、昨年10月、ヒンドゥーの一大イベントである「ドゥルガ・プジャ」の祭りで目にした光景は、バングラデシュ人が、宗教の違いを尊重する姿勢を余りにも雄弁に物語っていた。この巨大な祭りの期間中、ダッカも含め、町のあちこちに、ヒンドゥーの神々が祭られる立派な祭壇が作られる。

そして最終日には、その神々の像を聖なるガンジス川に流すべく、ヒンドゥー教徒が大挙して、ド派手に装飾したトラックに神々を載せ、大音量のスピーカーで音楽を鳴らしながら、町中を狂喜乱舞しながら練り歩くのだ。当然、街中の交通網は完全に麻痺。まるで、国全体がヒンドゥー教国になったかのような大騒ぎだ。

  人口過密国バングラデシュ
 ~街中を練り歩くヒンドゥーの神々を載せたトラック。大音量と狂喜乱舞は明け方4:00くらいまで続いた~

 ところが、この国のムスリムと来たら、例えばこんな感じだ。
 「今日は、ヒンドゥーの同僚のアイツが、あそこで踊り狂ってくるから、俺が代わりに店番だよ」

 茶屋で店番をしながらヒンドゥーのパレードを所在無げに見つめる親父は涼しい顔。挙句の果てに、ドサクサにまみれて一緒に踊り狂っているムスリムも目立つ。

 モスクが立ち並ぶバングラデシュの街で展開される巨大なヒンドゥーのお祭り、そんな祭りを、それぞれのやり方で楽しむバングラデシュ人の様子を見ていると、宗教の違いを理由に殺し合いが発生している世界が、途方もなく遠くに感じるものだ。

 密なコミュニケーションは社会のセーフティ・ネットとしての役割も果たす。多くのベンガル人の住まいである、昔の日本の長屋のような集合住宅はとても狭く、プライバシーは皆無といって良い。しかし、家族や親戚、そして隣人同士の密なコミュニケーションにはうってつけの場所だ。物の値段から新しい店のこと、政治の話まで情報は口コミですぐに広がる。常に光っている人の目や、瞬く間に広がる噂話は、犯罪の抑止にも効果を果たす。家族が怪我や病気で働けなくなった場合には、手を差し伸べる親戚や家族がすぐ傍にいる。


 
 そんなバングラデシュに飛び込んだ日本人にとって、ベンガル人のあまりに濃密なコミュニケーションは、うっとうしく感じる時もある。 

 何故、通りすがりの見知らぬ人間に、国籍・仕事・住所から始まり、給料額や、結婚の有無や、相手との馴れ初めや、結婚しないこと理由や、あるいは携帯電話の番号を聞いてくるのか。ちょっと理解できないこともある(というか、殆ど常にそう思う)。

timp
 ~トラックの荷台を使った小型バス「ティンプ」でベンガル人と密着しながら村を移動中の筆者。こうした空間では、ほぼ選択の余地無く、ベンガル人との濃密な会話を楽しむことができる~

 しかし、バングラデシュ人のこうした濃密なコミュニケーションが、国を発展させていく上での力となり、また国家を決定的な過ちから守る盾となっているように思う。そして「最貧国」ならぬ「新・新興国」バングラデシュが直面している課題のひとつは、経済成長と都市化の進展の中で、かつて社会のセーフティ・ネットとしての役割や様々な紛争予防の機能を果たしてきたコミュニケーションが薄れ、共同体から零れ落ちる人が増えてきていることだろう。

 人と人との密なコミュニケーションが培ってきた社会資本を守りつつ、如何にして成長の糧を社会の隅々にまで行き渡らせるか、そして、そうした成長を持続的なものにしていくか、日本を含め、多くの先進国が経験してきた、そして今尚試行錯誤を続けている難題に、今、バングラデシュも向き合っているのだ(終わり)。
バングラデシュの経済・産業が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/04/14 14:40

バングラデシュが教えてくれた大切なコト ②

      バングラデシュが教えてくれた大切なコト②
 
    「わたしのこと、ちゃんと見てる?」 
      (バングラデシュ南部、モレルゴンジの民家の軒先で出会った女の子)

 
 目の前の人や物事を、ありのままに見つめること。
     良い、悪いの判断をする前に、対象と向き合うこと。

 簡単なようで難しい。

 蓄積した知識や経験、比較や分析のために身に付けたスキルが、時として、パターン化の罠へと自分の思考を誘い込み、好奇心を削ぎ、己が目を曇らせてしまうから。

 人や物事の本質に近付きたければ、大きく澄んだ目で、人や物事を見つめよう。バングラデシュで出会った、子供たちの美しい瞳を思い出そう。

 そうすれば、その物事や人を、良いところも、足りないところもひっくるめて、理解し、受け入れることができるはずだ。
バングラデシュが教えてくれた大切なコト | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/04/13 03:12

バングラデシュが教えてくれた大切なコト ①

   ASTE ASTE
   
  あせらず、ゆっくり。
     川の流れを見つめよう。日の光に耳を傾けよう。自分と向き合おう。
     成果を急ぎ過ぎず、成果にたどり着くプロセスを大切にしよう。
       心配ない。そんなプロセスを楽しめれば、いつか小船は魚でいっぱいさ…





 バングラデシュに世界銀行職員として赴任して早や8ヶ月が経った。その間、担当プロジェクトの現場視察や休日を利用した青年海外協力隊の赴任地訪問などで、訪れた町や村は30を超えた。バングラデシュはフォトジェニックな国。行く先々で印象的な風景に出会う。その風景は表情豊かな人々と自然とが織り成すものだ。

 そんな風景は僕が東京で仕事をしていたのでは気付かなかった、何か大切なことを教えてくれているような気がする。

 頭でっかち、字数過多な当ブログですが、たまには感じたままをシンプルに書いていこう、ということで、今後、記事の合間に「バングラデシュが教えてくれた大切なコト」を気の向くままに写真と共にアップすることにしました。
バングラデシュが教えてくれた大切なコト | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/04/09 01:50

バングラデシュは本当に“最貧国”なのだろうか?(その1)

   ダッカの大通りを埋め尽くすモノたちの列

 「南アジアの最貧国」という枕詞と共に語られることが多いバングラデシュ。しかし、ダッカの街中に広がる風景を前に、拍子抜けともいえる意外感とともに、こんな疑問を浮かべる訪問者は多いのではないか。
 「バングラデシュって本当に“最貧国”なのだろうか?」 

 ダッカの往来を埋め尽くす乗用車。日本車を中心にピカピカの新車も目立つ。主として富裕層が利用するスーパーに入れば、化粧品や日用品、食料品等、日本やアメリカのスーパーと殆ど変わらない品揃え。価格も日本とあまり変わらない。

   ダッカのスーパーマーケット
  ~ダッカの富裕層向けスーパー、「アゴラ」店内。先進国と変わらぬ品揃えだ~

 一般の人々が利用する地元の市場でも、丸々とした野菜や香ばしい香りを放つ果物、そして数多くの魚等、豊富な品揃えを楽しめる。立ち並ぶモダンな高層ビルの下を行きかう人々の服装も小奇麗だ。ダッカの街中のアチコチに24時間オープンの銀行ATMがあり、一日上限10万タカ(10万円)で、何時でもお金を引き出せる。他行のATMであっても概ね引き出し可能で手数料はかからない。

     ダッカ4
     ~乗用車の増加とともにダッカの渋滞は悪化の一途を辿っている~

 ダッカの中心部にそびえる「ボシュンダラ・シティ」に行けば、自分が“最貧国”にいるとはとても信じられないだろう。「南アジア最大のショッピング・モール」としてオープンした21階建ての巨大な建物は、8階までがデパートとなっており、洋服、家電、貴金属、日用品などなどを販売する約1,500店舗に日々多くの消費者が押し寄せる

     ダッカ2
    ~買い物客でにぎわう巨大ショッピングモール、ボシュンダラ・シティ~

 8階部分はフライド・チキンやピザ、ハンバーガーなど様々なファースト・フードを販売するフード・コートに映画館が併設されている。ボシュンダラ・シティの混雑は、ここで売られる薄型液晶テレビや高価な貴金属類などを買えるだけの購買力を持った消費者が相当数存在することを示している。そしてこの巨大なショッピング・モールがオープンしたのは、決して最近の出来事ではない。既に7年も前、2004年の夏の出来事なのだ。

 人々の購買力の向上を支えるのが、昨年トルコを抜き、中国に次ぐ世界第二の輸出国となったニット・ウェア商品を初めとする縫製業、販売額10億ドルを突破し近隣諸国への輸出も展開する製薬業、皮革産業、ジュート産業、利用者数が人口の3分の2近く、8、500万人を突破した携帯電話などの通信業等、各種産業の隆盛だろう。

   ダッカ1
  ~ダッカ近郊の「輸出加工区(Export Processing Zone)」内の縫製工場。縫製業は若い女性の雇用の受け皿ともなっている~

 視点を田舎に移しても「本当に最貧国なのか?」という疑問は強まるばかりだ。バングラデシュ赴任後の8ヶ月で既に30以上の村や町を訪問してきたが、どこへ行っても市場は人々の活気と豊富な物産で溢れている。そして、青々と広ががる田園風景。2011年現在で、3,300万トン、日本の4倍、世界第4位を誇る米の生産量は、異なる品種の3毛作を可能とする肥沃な大地が齎す恩恵だ

   田園風景
 ~黄金のベンガルを象徴する青々とした水田、バングラデシュの田舎の風物詩だ~
  
 様々な野菜や果物の実りも豊かで、夏場にはパイナップルやマンゴーの甘い香りが市場いっぱいに漂う。また、外から見れば「毎年の洪水で国土の半分が“水没”する、“厳しい環境”」として語られがちな毎年の雨季だが、古来より「黄金のベンガル」と呼ばれてきたバングラデシュの豊穣な大地をつくりだし、また、豊かな漁場を生み出す恵みでもあるのだ。

 「最貧国」というと、食うや食わずの人々や紛争等により故郷を追われた難民、ハイパーインフレや物資の欠乏、あるいはHIV/AIDなどの感染症の蔓延等が想像されるが、そのどれをとっても、バングラデシュには、それ程当てはまるようには見えない(無論、栄養失調は未だ大きな課題だが、飢餓人口が社会問題となっている訳ではない)。



 こうして見ると、むしろ、「何故バングラデシュは「最貧国」に分類されているのか」と疑問に感じてしまう。世界銀行は、最貧国、即ち「Low income country」を一人当たりの国民所得(GNI)が1005ドル以下の国と定義している。そして、最貧国と分類されている35カ国を見ると、ブルンジ、ニジェール、マラウイ、マリと言ったサブサハラの国々、東アジアでは、北朝鮮、カンボジア、ミャンマーが含まれており、南アジアでは、アフガン、ネパールと並んでバングラデシュが含まれている。ちなみにバングラデシュの一人当たりの国民所得は2011年現在700ドル。確かに最貧国だ…

 しかし、この数字はあくまでも一国の富を人口で単純に割ったもの。つまり人口の大きな国ほど、値は小さくなる。そして、バングラデシュは世界で8番目に大きい約1億5千万人の人口を擁する。
 
   定員オーバーの船
  ~人口過密国バングラデシュを象徴するような明らかに定員オーバーの船。どこへ行っても人・人・人。。。沈まないことを祈るばかりだが、乗っている人々は笑顔で手を振ってくる。~

 最近、「中国が世界第二の経済大国になった」といわれるが、この指標、つまり国全体の経済力を示すGDPでバングラデシュを見ると、1,150億ドル(約11兆円)でベトナムに次ぐ53位、さらに物価の違いを加味した購買力平価ベースで見ると2,825億ドルで、世界で189か国中、44番目の経済力を持つことになる。

 多くの人々が持つ「バングラデシュ=最貧国」というイメージは、数ある経済・社会統計の一つに過ぎない「一人当たりの国民所得(GNI)」という指標を一人歩きさせた結果ではないか。日本でバングラデシュといえば、「貧困」「災害」そして「貧困層を助けるグラミン・バンク等のソーシャル・ビジネス」が三大イメージであろうが、これらは「バングラデシュの今」やその可能性・課題を正確に反映しているイメージとはいい難い。

 バングラデシュはもはや「最貧国」ではなく、世界で上から4分の1の経済力を持つ新・新興国である。そして、直面している課題は、飢餓や感染症、極度の貧困といったものではなく、拡大する経済活動に見合うエネルギー、水そしてインフラの確保、無秩序に進む都市化と環境汚染への対応、そして格差の拡大といった、新興国に共通するテーマなのだ。

 と、ここまで書いてきて、ふと本ブログの副題を見ると「可能性と挑戦に満ちた南アジアの最貧国バングラデシュ」となっているではないか…(汗)。いけない、「新・新興国バングラデシュ」に変更することにしよう。
バングラデシュの経済・産業が織り成す物語 | コメント:(0) | トラックバック:(0) | 2012/04/05 22:35
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